2010 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野活動の個人差を生む要因の網羅的解析 -多様性の認知神経科学-
Project/Area Number |
09J10385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 隆太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 個人差 / 脳機能イメージング / 前頭前野 / 機能的近赤外分光法(NIRS) / 光トポグラフィ / ワーキングメモリ / パーソナリティ |
Research Abstract |
本研究は、"前頭前野"と呼ばれる脳領域のはたらきの個人差・多様性を解明することを目的としている。本年度は前年度までに収集した計測データを多角的に解析し、また複数のデータセットを統合してメタ解析を実施するための枠組みの検討をおこなった。(1)まず、約30名の健常成人を対象として脳活動と気分状態の関係を解析した結果を論文にまとめ、国際誌に発表した。この研究では、質問紙指標(アンケート調査)を用いて調べた被験者のネガティブ気分が、言語性ワーキングメモリ課題に取り組んでいるときの前頭前野活動の大きさと負に相関することが示された。(2)続いて、40名の健常成人を対象とした別の実験(H21年度実施)から得られたデータと(1)のデータを統合して解析することで、ネガティブ気分のなかでも("怒り"や"不安"よりも)"抑うつ"や"疲労"気分が言語性ワーキングメモリ課題に伴う脳活動と特に強く相関することを示した。この解析に用いた複数の実験で得られたデータを統合する手法は、様々な研究に適用できるものであり、光トポグラフィを研究に用いている多くの研究者に役立つものと期待される。(3)また、90名の健常成人を対象とした第3の実験(H21年度実施)からは、個々人の課題成績(正答率の高さや反応時間の速さ)と前頭前野活動が正に相関することがわかった。この傾向は特に空間性ワーキングメモリ課題において顕著にみられたため、上記の研究結果と合わせて、"言語性ワーキングメモリ課題に伴う脳活動は気分やパーソナリティの個人差を反映する一方で、空間性ワーキングメモリ課題に伴う脳活動はパフォーマンスの個人差を反映する"という、認知課題による相違が示唆された。本研究の結果は、認知機能間の差異を考えるうえで、単なる脳活動の平均値ではなく、脳活動の個人差の生じ方に注目することの重要性を浮びあがらせたものといえる。
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