2011 Fiscal Year Annual Research Report
紙上建築としてのソヴィエト建築史 : イワン・レオニドフの建築プロジェクト研究
Project/Area Number |
09J10409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 晃子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 建築史 / ロシア / 全体主義 / 現代建築 |
Research Abstract |
平成23度は、主として次の3つの成果を収めることができた。 1.ロシア構成主義建築家レオニドフの作品研究に関わる成果 平成23年度には、東京大学大学院総合文化研究科に博士論文『天体建築論--イワン・レオニドフとソヴィエト建築』を提出し、受理された。同論文は、世界的にもはじめてレオニドフの創作思想を深く掘り下げて論じたものとなっており、わけても、レオニドフの前期作品をマスメディアや交通といった非場所的な運動を前提とした建築としてとらえ直した点、これまで単なる幻想的なスケッチとみなされてきた彼の後期作品を、生物学者ヘッケルの根源形態の理念などから解き明かした点などは、これまでのレオニドフおよびロシア構成主義建築運動に対する理解を更新する、注目すべき成果であったと考える。同論文は平成24年度中の出版を準備している。 2.社会主義リアリズム建築研究に関わる成果 「社会主義リアリズム」と呼ばれる全体主義的な様式の誕生の背景について、1930年代にソヴィエト建築界において提唱された「建築の有機化」というスローガンを手がかりに考察を行い、レオニドフら構成主義建築家らの一元論的建築理論に対する、社会主義リアリズムの二元論を明らかにした。その際には、当時の建築雑誌等のメディア上の言説と実際の建築作品を相互連関させながら読解していくという方法論を用いたが、このような手法はソヴィエト建築研究の分野では未だ先例がなく、建築作品を広く社会的、特にメディア論的な文脈の中で見直すという点でも、意義深いものであったと考える。なお同論文は、『ロシア語ロシア文学研究』第44号に掲載予定である。 3.現代ロシア建築文化の紹介 上述の成果に加え、ソ連崩壊前後のロシア建築文化をソヴィエト建築史の観点から紹介する書籍の執筆や、ロシア・東欧学会における講演などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は修士課程より継続してきたイワン・レオニドブの作品研究を博士論文として完成させることができた。また加えて、1930年代後半にソヴィエト建築界が全体主義化してゆき、レオニドフら構成主義建築家がそこから徐々に排斥されていく過程の文化的背景についても、分析・考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究成果を下敷きに、1930年代後半から50年代にかけて遂行されたモスクワの再開発計画「新モスクワ」計画を研究対象として取りあげる。この計画を通して、特に「社会主義リアリズム」とよばれる全体主義的な様式がその権威を確立していった過程を、建築雑誌や報道、あるいは映画などのマスメディアの中における建築像から調査していきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)