2010 Fiscal Year Annual Research Report
ニューリベラリズムの思想史的研究―グローバルな福祉社会の構想―
Project/Area Number |
09J10417
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬路 智仁 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 世紀転換期のイギリス / ニューリベラリズム / 理想主義哲学 / 社会的なもの / 福祉社会 / 英帝国 / 国際連盟 / アングリカン自由思想 |
Research Abstract |
採用二年度の研究の実施状況、及びその成果は以下の三つに大別される。 (1)一つ目は、博士論文執筆の上で布石となる当該研究課題分野の先行研究の渉猟・整理することである(これは前年度からの引き続きの作業でもある)。これは(a)20世紀への世紀転換期を対象とするイギリス政治思想史研究(イギリス本国という国内的空間を想定するもの)、(b)円卓会議運動や国際連盟構想を対象とする実証的な英帝国史研究及び帝国思想史・国際関係思想史研究、(c)政治思想のより基底にある同時期のイギリスを対象とする宗教・倫理思想、の三つに大きく分けられるが、この内今年度は(b)の渉猟・整理に努めた。前年度に行った(a)と(c)も合わせて、来年度この課題を完遂する予定である。 (2)二つ目は、今年度の研究成果の発表である。この点については、(1)の作業を進める中で、円卓会議運動の指導者の一人であり、世界初の国際政治学者ともなったアルフレッド・ジマーン(Alfred E. Zimmern, 1979-1957)の再理解及び再評価を行い、先行研究とは異なる、戦間期における「国際的福祉社会の構想者」としてのジマーン像の提示を試みた論文を執筆した。本論文は、現在(2011年4月現在)、日本国際政治学会の学会誌『国際政治』に投稿・査読審査中である。 (3)三つ目は、前年度に引き続く、イギリスにおける一次文献・資料の調査・収集である。今年度は7月後半~8月末にかけて、オックスフォード大学ボードリアン図書館(オックスフォード)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス図書館資料室(ロンドン)において、理想主義哲学の思想的影響を受けつつ英帝国再編や国際連盟の構想を担った人物(今年度は上記アルフレッド・ジマーンを甲心に)の未公刊論考や日記、手記を渉猟することに努めた。前年度より行ってきた当該研究課題遂行上不可欠なこうした一次文献・資料の収集は、残すところ、あと一人の人物(フィリソプ・カー(Philip Kerr))のものに絞られたため、来年度中に完逐する予定である。
|
Research Products
(1 results)