2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国の民間防衛意識-冷戦初期における「民間防衛団」の考察を中心に-
Project/Area Number |
09J10420
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 雅子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アメリカ合衆国 / 民間防衛 / 第二次世界大戦 / 冷戦 / 地域研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、合衆国における丁「民間防衛(civil defense)」意識の変遷の一端を明らかにすることである。より具体的には、従来冷戦期の遺産の代名詞として扱われてきた民間防衛を第二次大戦期からの連続した文脈の中に位置づけ、大戦期までの民間防衛の経験が冷戦期の人々の民間防衛意識にどう影響したかを検討する。 本年度はまず、第二次大戦と冷戦が合衆国社会に与えた影響に関する先行研究の整理に取り掛かった。これまで得た知見では、大戦中の合衆国の民間防衛は、数本の博士論文を除いて合衆国社会の戦争動員の一部として扱われるに留まっている。他の連邦諸機関との複雑な連携体制の中で民間防衛局がどういう役割を期待されていたかを解明する必要がある。平成21年5月には東京大学で開催されたハーバード大教授ローレル・ウルリック氏のセミナーの司会を務め、歴史研究における一次史料のあり方への理解を深めた。 次に、ニューヨーク公共図書館とメリーランド州の国立公文書館で史料調査を行った。特に、第二次大戦期の民間防衛に関する予想以上に膨大な量の史料群を閲覧できたことは大きな収穫であった。本調査で入手した大戦期から冷戦初期にかけての民間防衛に関する史料は現在精読・整理中であり、連邦・地方レベルの史料をいかに連関させて当時の人々の民間防衛意識を描き出すか模索している。平成22年3月には科学研究費補助金プロジェクト「公共文化の胎動」の研究会でコメンテーターを務め、合衆国の人々の国際秩序観という本研究にとっての重要な視座への理解を深めた。 最後に、本研究の成果は、合衆国が世界との関わりを拡大する中で合衆国民の自国観や世界への眼差しがどう変化していったのかを明らかにし、従来分断されがちであった第二次大戦史と冷戦史を架橋すること、そして合衆国史をグローバルな文脈で捉えようとする近年の学術的発展にも貢献することを目指し作業を続けたい。
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