2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 翔一 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自由意志 / リバタリアン / 決定論 / 反実在論 / 不確定性 / 理由 / 説明 / 行為 |
Research Abstract |
本研究は理解可能なリバタリアン的自由の行為のモデルを構築することを目的としている。そのための課題として本年度において重点的に取り組むとしたのは、自由な行為に関わる不確定性を理解可能なものとして定位するということである。リバタリアン的な自由な行為が理解可能であるためには、行為の前の状態が不確定でなければならないということを指摘したのはロバート・ケインであるが、彼はその不確定性を量子力学的な不確定性とみなす。しかし、この考えには問題点が多く、そこで私としては他の可能性を探ることとなった。そして、この課題を行為(および世界)を反実在論的にとらえることで、解決するというのが本研究のもくろみであった。そのため、反実在論の代表的論者であるマイケル・ダメットの著作を始め、科学実在論/反実在論の論争に関する文献の研究にあたった。こうして、行為における信念や欲求は行為後に確定し、理由として生成するという行為のモデルの可能性が明らかになった。これは世界を反実在論的にとらえることで、不確定な状態をむしろわれわれの常態とみなし、行為の前の不確定性をどう解釈するかという問題を解消するものである。また、この問題に取り組む中で決定論の身分についてどのように考えるかという問題が出てきた。決定論を世界のあり方に当てはまるものとすることは、本研究の立場とは両立しないからである。そこで、決定論に関する研究・考察をすすめ、決定論の自己論駁的性格を明らかにし、決定論というものを世界のあり方にそのまま当てはまるものとしてではなく、世界やわれわれの行為を説明・理解する図式としてとらえる可能性を示した。この成果は2009年度の日本科学哲学会における研究発表「『予言破りの自由』再考」において発表された。
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Research Products
(1 results)