2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 翔一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自由意志 / リバタリアン / 決定論 / 反実在論 / 不確定性 |
Research Abstract |
本研究は理解可能なリバタリアン的自由の行為のモデルを構築することを目的としている。そのための課題として本年度において重点的に取り組むとしたのは、自由な行為に関わる不確定性を前提としたうえで、いかにして自由な行為を考えるかである。リバタリアン的な自由な行為が理解可能であるためには、行為の前の状態が不確定でなければならないということを指摘したのはロバート・ケインであるが、彼はその不確定性を量子力学的な不確定性とみなす。しかし、この考えには問題点が多く、そこで本研究では行為にかかわる不確定性を反実在論的にとらえることで解決するという方策をとった。それを踏まえた上で本年度において問題となったのは、非決定論的に生じた行為にいかにしてコントロールや合理的な説明が成立するのかということである。この問題に対して二方向から取り組んだ。一方は、コントロール・説明概念の再考である。それ以外にはありえないといったできごとに対してのみ成立する、その意味で「完壁な」コントロールや説明だけが、コントロールや説明ではないということを示すことで、リバタリアン的な自由な行為の理解可能性を探った。もう一方は、行為モデルの考察である。ここでポイントになったのは、行為者と行為の関係である。標準的な行為モデルでは、行為に際して変化が起こるのは(行為が生じる)世界であり、行為者(の信念や欲求)に変化が起こることは想定されていない。それに対して、本研究では行為者のあり様もまた行為とともに変容すると考える。以上の二方向からの議論によって、リバタリアン的な自由な行為のモデルおよびそこでのコントロールや説明の成立の可能性を探った。その成果の一端は、2011年1月に中国・北京にて行われた第5回BESETO哲学会議における研究発表「The Importance of Anti-Realism for Libertarian Freedom」にて発表された。
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Research Products
(2 results)