2010 Fiscal Year Annual Research Report
中動態の思考の射程――アリストテレス『カテゴリー論』の言語態分析
Project/Area Number |
09J10436
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯 忍 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アリストテレス / カテゴリー / エートス / ヘクシス / ミメーシス / ホモイオーシス |
Research Abstract |
『カテゴリー論』、『命題論』、さらにアリストテレスの他のテクストの言語態分析を通じて、「カテゴリー」の成立、「命題」の構造を明らかにすることを本研究はめざす。『詩学』を中心に「行為」(プラークシス)および「模倣」(ミメーシス)を集中的に検討した昨年度につづき、第二年度にあたる2010年は、『政治学』、『ニコマコス倫理学』、実践的弁論、社会的パフォーマンスの諸技術のレパートリーのみならず、ポリスの理論的な基盤をも提供している『弁論術』を視野にいれたうえで、「おのれを持する」(ヘクシス)ことの社会的な基盤を精査することにより、カテゴリー論が構築される可能性を考察した。そのような関心のもと、根本概念であるエートス、プロアイレシス(決断)について論じたドイツ語による二つの発表(「ethos homoion」および「proairesis」)が、報告さるべき成果である。 『弁論術』においてカテゴリーが法廷弁論の第二、すなわち告発(kagegoria)として登場し、第一の弁明ないし弁護と対をなしていることが、議論の手がかりとなった。アリストテレスによれば、法廷弁論は過去に関係しており、正・邪を明らかにすることを目的としているが、その際の手段が『政治学』において「ロゴス」と呼ばれているのである。「ロゴス」は人間を他の諸動物から区別するものとされ、人間はすなわち「ロゴス」を「持つ」(echein,hexis)者と定義される。ここでいう「ロゴス」とは、一般にそう考えられているように、単に「言語」のみを意味するわけではない。むしろ(言語にもとづく)コミュニケーションの可能性、公共性=アゴラの条件として理解されるべきものである。その意味でも、メディウムとしての「ロゴス」の諸相についての考察が大きな位置を占め、ロゴスにもとづくコミュニケーションの可能性が、「カテゴリー」という語のエレメント、すなわち-gorieのうちに見出されることとなった。カテゴリーそのもののカテゴリーの解明をめざすという本研究課題は、かくして法学ないし修辞学用語としての「カテゴリー」が哲学用語へとその容貌をかえる地平に到達する。
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Research Products
(2 results)