2009 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシア・アイデンティティとしてのイスラーム:司法制度をめぐる論争の分析から
Project/Area Number |
09J10481
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
光成 歩 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マレーシア / イスラーム司法 / 「改宗」 / 「棄教」 / 管轄問題 / マレー人ムスリム |
Research Abstract |
本研究の目的は、法制度とそれをめぐる論争の分析を通してマレーシアにおけるイスラームの位置づけを構造的に把握することである。実施計画には約半年間の現地滞在による資料収集及びインタビュー調査をおこなうと記載したが、優秀若手研究者海外派遣プログラムの適用を受け、11か月にわたる現地滞在の機会を得た。本年は、とくに「イスラームへの/からの改宗(改宗・棄教)亅をめぐる複数の裁判係争の分析をおこなった。ここから、イスラーム信仰と公的身分とが連動するマレーシアにおいて、「改宗・棄教」係争が一般司法とイスラーム司法の管轄問題という司法制度の問題として立ち現われる仕組みを考察した。具体的には、「改宗・棄教」という越境行為が宗教行為としての側面と行政手続きとしての側面とに区切られることによって、マレーシアの一般司法とイスラーム司法双方の管轄に含まれ続ける二重司法状態が生じていることを明らかにした。このような二重司法状態は、「改宗・棄教」が宗教や民族を異にするコミュニティ間の問題として表れた際に、コミュニティ間の調整の場として連邦裁判所が「改宗・棄教」に対する管轄を持ち続けることを示すものである。このように、「改宗・棄教」を主題とすることによりマレーシア司法制度におけるイスラーム司法の外縁をある程度明らかにすることが可能となった。
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