2010 Fiscal Year Annual Research Report
カイコにおける昆虫サイトカインparalytic peptideの活性化機構の解
Project/Area Number |
09J10519
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健一 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然免疫 / サイトカイン / カイコ / 歯周病菌 |
Research Abstract |
我々は、カイコの血液中において昆虫サイトカインparalytic peptide(PP)が病原体由来因子により活性化されるという新規免疫応答を見出している(Ishii et al.,2008)。また我々は、カイコにおけるPP活性化反応が、カイコの黄色ブドウ球菌感染に対する宿主抵抗性の発揮において重要であることを示している(Ishii et al.,2008)。このようなサイトカインは、宿主体内において複数の免疫応答を統合的に制御することにより、病原体の効果的な排除に寄与すると考えられる。しかしながら、活性型PPが標的細胞においてどのような反応を誘導し、宿主の感染抵抗性を上昇させるかは明らかではなかった。本年度において私は、活性型PPによりカイコ体内で誘導される二次的免疫応答について解析し、論文(Ishii et al.,2010a)にその成果をまとめるに至った。私は本論文において、昆虫サイトカインPPがカイコにおいて、血球細胞での細菌貪食反応並びに脂肪体でのp38 MAPK経路を介した抗菌ペプチド産生といった、複数の免疫組織での免疫応答を同時に活性化する事を示した(Ishii et al.,2010a)。今後、これらの活性型PPによる免疫系活性化の詳細な分子機構について明らかにする事により、サイトカインの働きの根幹に関する理解が深まることが期待される。 上記の昆虫を用いた自然免疫系に関する研究から派生して、歯周病菌が宿主生物の免疫系の過剰活性化を引き起こすメカニズムに関する研究に着手し、論文(Ishii et al.,2010b)にその成果をまとめるに至った。本論文で私は、哺乳動物の歯肉に炎症を引き起こす歯周病菌を用いて、自然免疫の過剰活性化によりカイコ個体が死に至ることを示した。我々が知る限り、病原体の全身感染による自然免疫の過剰な活性化により個体死が起こることを無脊椎動物において示した例はなく、本論文が初めてである。このカイコの過剰免疫疾患モデルは、哺乳類における炎症反応の理解並びにそれに対する治療薬の探索に役立つと考えられる。
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Research Products
(5 results)