2009 Fiscal Year Annual Research Report
カイコにおける昆虫サイトカインparalytic peptideの活性化機構の解明
Project/Area Number |
09J10519
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健一 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然免疫 / サイトカイン / カイコ / 貪食反応 / 抗菌ペプチド |
Research Abstract |
我々は、カイコの血液中において昆虫サイトカインparalytic peptide(PP)が病原体由来因子により活性化されるという新規免疫応答を見出している(Ishii et al., 2008)。また我々は、カイコにおけるPP活性化反応が、カイコの黄色ブドウ球菌感染に対する宿主抵抗性の発揮において重要であることを示している(Ishii et al., 2008)。このようなサイトカインは、宿主体内において複数の免疫応答を統合的に制御することにより、病原体の効果的な排除に寄与すると考えられる。しかしながら、活性型PPが標的細胞においてどのような反応を誘導し、宿主の感染抵抗性を上昇させるかは明らかではなかった。本年度において私は、活性型PPによりカイコ体内で誘導される二次的免疫応答について解析し、以下の知見を得た。 まず、カイコの免疫組織(血球細胞及び脂肪体)においてPPにより発現が誘導される遺伝子を明らかにする目的で、活性型PP(化学合成された精製品)を血液内注射したカイコから血球細胞及び脂肪体を摘出し、それぞれから抽出したRNAについてマイクロアレイ法による遺伝子発現変動の網羅的解析を行った。その結果、PPの投与により、血球細胞ではtetraspanin E, actin A1,及びced-6等の貪食関連遺伝子、また脂肪体ではcecropin A及びmoricinといった抗菌ペプチド遺伝子の発現量が増大していた。次に、上記の結果に基づき、血球細胞及び脂肪体においてPPにより誘導される免疫応答について解析した。その結果、活性型PPがカイコの血球細胞における細菌取り込み(貪食)反応を促進すること、またPPによる脂肪体での抗菌ペプチドの誘導に細胞内ストレス応答因子p38MAPKが必要であることが判明した。 このように、複数の免疫応答を同時に制御する昆虫サイトカインは未だ報告されておらず、本研究が初めての例である。今後、PPを介した新規免疫応答の分子機構について、さらに解析を進めることにより、サイトカインの働きの根幹に関する理解が深まることが期待される。
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Research Products
(1 results)