2010 Fiscal Year Annual Research Report
海馬苔状線維の異常発芽におけるミトコンドリア動態の解明
Project/Area Number |
09J10562
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中原 聡一郎 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | てんかん / 異常発芽 / ミトコンドリア / 顆粒細胞 |
Research Abstract |
側頭葉てんかんは精密なネットワーク形成の異常を原因とする神経疾患である。側頭葉てんかん患者において、海馬歯状回苔状線維は異常な多数の分枝を形成し、顆粒細胞間にシナプスを形成する。この現象は異常発芽と呼称され、異常発芽は歯状回に異所性の反回性興奮回路を形成し、海馬を発作源に変性させると推察されている。しかし、その形成メカニズムは明らかとなっておらず、早急に解決すべき課題である。本研究は、異所性神経回路形成を誘起する細胞内メカニズムを解明することを目的とする。具体的には軸索形成に必要なエネルギーを供給するミトコンドリアと異常発芽の関連を検証する(ミトコンドリアの機能および局在、またそれを制御する因子の同定)。 現在、てんかん時には以下の流れを経ることを示している。 (1)顆粒細胞内のミトコンドリア密度のcAMP依存的な増加→(2)増加したミトコンドリアのBDNFによる局在化(BDNFは苔状線維自身から放出される)→(3)ATPの過剰供給→(4)側枝形成→(5)異常発芽→(6)慢性的な自発発作、である。 そして、今後はミトコンドリア動態を制御することで、異常発芽を阻止することにより、てんかん発作の緩和の実現をてんかんモデル動物において目指す。さらに最終的には側頭葉てんかん患者の海馬標本においても異常発芽におけるミトコンドリアの関与を検証する。本研究は神経発達学に対して斬新な知見を提供すると同時に、てんかんの病態メカニズムに新規知見を付与し、その治療法にも新たな可能性を示すことが期待される。
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Research Products
(4 results)