2011 Fiscal Year Annual Research Report
海馬苔状線維の異常発芽におけるミトコンドリア動態の解明
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09J10562
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中原 聡一郎 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | cAMP / てんかん / 海馬 |
Research Abstract |
てんかんは神経細胞群の過剰な同期発射を要因とする慢性の脳疾患である。てんかんのうち内側側頭葉てんかんの患者では、乳幼児~小児期に何らかの外部刺激(脳損傷、発熱、感染等)誘発性のけいれんを経験していることが少なくない。また、この時期は神経回路形成に重要な時期であり、けいれんの要因となる過剰な神経活動が、正常な神経回路形成に影響を与え、その結果として形成される異所性神経回路がてんかん原性領域となる可能性がある。そこで、本研究では、乳幼児期のけいれんが神経回路形成に与える細胞生物学的メカニズムの解明を目的とした研究をおこなった。 異所性神経回路の典型例として、内側側頭葉てんかん患者の海馬歯状回における苔状線維の異常発芽の形成が挙げられる。これは、顆粒細胞の軸索である苔状線維が歯状回門で過剰な側枝を形成し、顆粒細胞間にシナプスを形成する現象である。なお、異常発芽した苔状線維は海馬歯状回において顆粒細胞の同期発射を誘発する。本研究では、顆粒細胞の過剰な側枝形成における細胞内サイクリックAMP(cAMP)量の変動の関与を検証した。これは、cAMPが様々な神経細胞において形態調節をおこなうこと、そして、てんかんモデル動物の海馬においてcAMP量の上昇が確認されているためである。 本研究により、幼児期のてんかん原性過程において、異常発芽の形成は、以下のような過程を経ることが明らかになった。即ち、(1)顆粒細胞の過剰興奮に伴うCa^<2+>流入→(2)顆粒細胞でのcAMP上昇→(3)軸索内でのミトコンドリア密度の上昇→(4)新たな側枝の形成→(5)異常発芽の形成、である。以上の結果は、てんかん原性獲得過程における、一過的なcAMP上昇の重要性を初めて明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Vitroではてんかんの原因が追究でき、vivoの動物実験においてもそれは再現できた。 ただし、vivoのてんかん状態をcAMPの抑制により防ぐことを今後おこないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
Vivoのてんかんモデル動物において、cAMPの抑制による、異常発芽の阻止およびけいれん発作の抑制を目指す。
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Research Products
(5 results)