2010 Fiscal Year Annual Research Report
NMRを用いたカテキン類と生体成分との相互作用解析
Project/Area Number |
09J10565
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
植草 義徳 静岡県立大学, 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | カテキン / リン脂質膜 / 超高磁場NMR / 分子間相互作用 / カチオン-π相互作用 / 自己拡散係数 / 異種核NOE / 食品成分 |
Research Abstract |
本研究では、溶液NMR法によるカテキン類とリン脂質膜との相互作用解析を継続・発展させ、新たな知見として以下のことを見いだした。 (1)カテキン類の水溶液中及びリン脂質膜中における自己拡散係数(D)を測定し、膜に対する親和性評価を行った。ECgの膜中でのDは水溶液中の1/3程度であり、膜自身の値ともよく一致した。他のカテキン類についても検討を行った結果、水溶液中では全てのカテキン類が同程度の値を示したのに対し、膜中ではカテキン類の違いにより異なる値を示し、ECg=EGCg<EC<EGCであった。これは以前報告した親和性の結果と良い相関を示しており、galloyl基を有するカテキン類が強く膜と相互作用することが実証された。 (2)高分解能を有する超高磁場920MHz NMRを利用したNOESY計測により、これまで困難であった水溶液中におけるECg及びEGCg分子の状態分析を行ったところ、水溶液中では膜中で観測された特定の立体構造を保持しないことが示唆された。また、膜中におけるカテキン類の水素結合情報を取得するために重水素交換速度実験を行った。その結果、ECg及びEGCgの水酸基は膜中で水素結合を形成している可能性は低く、膜周囲の水分子がこれら水酸基にアクセスできるような分子配向を有していることが推察された。 (3)^<13>C安定同位体ラベルECgをリン脂質膜に相互作用させ、異種核NOEの観測を行った。膜を構成するリン脂質分子のγ位水素に選択的パルスを照射した結果、ECgのgalloyl基のカルボニル炭素の信号強度が分子間異種核NOEによって変化し、galloyl基がリン脂質膜との相互作用に強く関与していることを示唆した。先行研究の固体NMR実験により、ECgとリン脂質分子の一部の原子間距離を決定したが、本実験を通じて新たな距離情報を取得したことにより、これまで提唱していた相互作用メカニズムをより確実なものとした。
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Research Products
(11 results)