2010 Fiscal Year Annual Research Report
合意を前提としないリスクコミュニケーション手法の開発
Project/Area Number |
09J10585
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関谷 翔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リスク / ルーマン / BSE / 食品安全委員会 / リスクガバナンス |
Research Abstract |
平成22年度の研究実施計画では、(1)リスクコミュニケーション(以下、RC)活動のサーベイ、(2)マルチエージェントシステムによる合意を前提としないRC手法の開発、(3)新規開発手法と従来のRC活動との比較、(4)食品安全委員会でのRC活動の分析という4項目を掲げた。研究の過程で、モデル構築によるアプローチよりも社会学的アプローチの方が適切であると思われアプローチを変更し、(3)と(4)は併せて、食品安全委員会の事例分析に注力することに変更した。具体的な作業と成果は以下の通りである。 第1に、ルーマンの『リスク』『社会システム理論』などを検討し、機能分析的手法が現実のリスク問題にどこまで肉薄できるか検討した。彼の議論は高度に抽象的であり、具体的問題圏と接続するために中範囲理論が必要となるが、その構築に相互作用の3類型(interaction、organization、society)が有益であることを明らかにした。 第2に、具体的事例として食品安全委員会のBSE対策ついて精査した。全頭検査の是非を巡っては、当該調査会の答申に全面的に依拠して、農林水産省・厚生労働省が20ヶ月齢以下の牛の検査対象からの除外を決定した。リスク論ではアセスメント、マネジメント、コミュニケーションという3つの領域が強調されるが、マネジメントがその判断の根拠を全てアセスメントに丸投げするような状況では、アセスメントとマネジメントとの分離が逆機能を果たす可能性がある。また、どんなに十全に機能したとしても、こうした3者の分割は原理的に問題を孕んでいる可能性が高いという論証を部分的に構築した。 第3に、上述のような逆機能の防止を目的の1つとして、リスクガバナンスという考え方が台頭しているが、その含意の特異性を析出するために、ガバナンス概念を先行して用いていた他分野との概念比較を行い、行政学での当該概念との類似性が明らかにした。
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Research Products
(3 results)