2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己注目の2側面と抑うつ:抑うつ低減のための方略の検討
Project/Area Number |
09J10591
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 慶輔 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己注目 / 反芻 / 省察 / 抑うつ |
Research Abstract |
自分のことを考えること,すなわち「自己注目」は抑うつと関連する不適応的な素因であると考えられてきた。しかし自己注目にはこうした不適応的な側面に加え,抑うつの抑制につながる適応的な側面もあると考えられている。前者を「反芻」,後者を「省察」と呼ぶ(Trapnell & Campbell, 1999)。抑うつを抑制するためには不適応的な自己注目を取り除き,適応的な自己注目を促進すればよいと予想されるが,本研究ではこうした自己注目の相反する2側面に焦点を当て,抑うつとの関連を検討した。まず,大学生173名を対象に縦断調査を行い,反芻の傾向が強い人は,ストレスを経験した場合に抑うつが特に強まることを確認した。次いで,大学生480名を対象に質問紙調査を実施し,自己注目することは良いことなのか,それとも悪いことなのかという「自己注目に対する信念」を測定する尺度(PBRS)の日本語版を開発した。この尺度を用いて,適応的・不適応的な自己注目と抑うつとの関連を検討した。その結果,自己注目をすることは良いことだという信念を持っている人は,不適応的な反芻を行うことで抑うつを強める一方で,適応的な省察を通じて抑うつを低減させる可能性も示され,自己注目と抑うつの間にある両価的な関連が明らかとなった。以上から,どのような自己注目を行うかが抑うつを考える上で重要であることが明らかとなり,反芻を抑制し省察を促進するという抑うつの予防法への示唆が得られた。
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Research Products
(6 results)