2011 Fiscal Year Annual Research Report
スウェーデン外交の連続性について―「積極的外交政策」の抑揚に着目して―
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09J10611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 謙 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スウェーデン / 外交 / 安全保障 / 中立 / 積極的外交政策 / 冷戦史 / NATO / カタリーナ事件 |
Research Abstract |
本報告者は、学術雑誌『北欧史研究』28号(2011年7月発行)に資料紹介として発表した「スウェーデンの『2011年外交方針宣言』と外交討論-解説と考察-」(39-47頁)において、最新のスウェーデン外交の動向を解説し、考察を加えた。この資料紹介は2009年の「外交方針宣言」から継続的に行っているものであり、平成23年度も引き続き「外交方針宣言」に加えて、それに伴う議会での「外交討論」にも踏み込んで今日のスウェーデン外交の体系的な分析を行った。 また、「バルト=スカンディナヴィア研究会」の2011年12月例会(2011年12月17日於早稲田大学)では、「冷戦初期の中立をめぐるスウェーデン外交の再検討-西側軍事協力とカタリーナ事件-」と題した研究発表を行った。同発表では、第二次世界大戦中のスウェーデンの対独、対ソ連関係から冷戦初期にスウェーデンが直面した外交上の課題と、それを出発点にスウェーデンが「中立」を標榜しながらも実際には西側諸国との密接な軍事協力関係を築いていく推移を通史的に論じた。なかでも特に、1952年の「カタリーナ事件」と呼ばれるスウェーデン=ソ連間初の「軍事衝突事件」に着目することで、同事件がスウェーデンにとって西側諸国やNATOとの軍事協力をさらに深めていくひとつの契機になったことを示した。このように「中立」を標榜しながらも西側との軍事協力を構築するスウェーデン外交の両面性こそが、後の「積極的外交政策」のダイナミズムを支える大きな要因の一つであったことも同時に示唆した。 以上の研究成果を発表したのち、スウェーデンと西側との軍事協力をより詳細に確認できる外交文書を入手するため2012年3月にスウェーデン、フランス、イギリスの3ヶ国に赴き、一次史料を多角的に収集し、それらを用いて博士論文ではより精緻化した議論を試みているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的と研究実施計画記載の通り、スウェーデン本国の最新の研究や複数国の公文書館で入手した外交文書から1950年代を中心にスウェーデン政府と西側諸国との密接な安全保障上の連携に着目することによってスウェーデンの「積極的外交政策」のダイナミズムの要因を見出すとともに、その内容についても現地の研究者とも深い議論を行った。さらに報告者の研究成果を研究会報告で発表するなど、その成果も公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題について今後も引き続き一次史料を用いることによってさらに国際政治史の分野において新しい視点を提供できる意義ある研究を続けていく。とりわけ将来的に「積極的外交政策」の抑揚のメカニズムを解明していくには、冷戦初期の時代にスウェーデンが西側諸国との密接な安全保障上の協力関係を構築していたことは極めて重要な意味を持つものであり、本研究課題をさらに深めていくにあたってはスウェーデンの「中立」そのものを問い直していく必要がある。
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Research Products
(2 results)