2009 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類個体群間における歌への生得的な学習選好性とその神経基盤
Project/Area Number |
09J10622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香川 紘子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鳥の歌 / コシジロキンパラ / 発声学習 / マイクロサテライト / 方言 / 動物行動 |
Research Abstract |
鳥類の歌は、学習によって獲得される音声である。音声を学習する動物は人以外には非常に限られた目でしか、発見されていない。そのため、鳥は人の言語の学習モデルとして広く研究されている。鳥の歌は、学習によって獲得されるが、遺伝的な制約も影響する。先行研究より、鳥は脳に歌鋳型を保持しており、自種歌に対する生得的な選好性があることがわかっている。このような生得的な歌鋳型が、自種歌や自種特異的な特徴の学習を促進すると考えられている。申請者はこれまでに、スズメ目コシジロキンパラの歌の地域差を発見した。生息環境が異なる個体群間は歌の特徴が異なる。申請者は、この歌の違いが環境によってのみ決定されるのかもしくは遺伝的な違いが関係しているのかを検討するために、行動、生理実験を計画した。今期に行った実験は、1,DNAを用いた遺伝距離の検討、2,歌を隔離した個体を育てるための飼育施設のセットアップと歌隔離個体の歌発達の記録である。1,について、歌の地域差のみられた個体群間には遺伝的にどの程度離れているかを進化速度の早い遺伝マーカー(マイクロサテライト領域)を用いて検討した。その結果、歌が異なる地域間で遺伝距離が離れていることがわかった。これは、直接的に遺伝的な違いが歌に影響するかは検討できないが、個体群間がある程度交配隔離されており、長期間遺伝子交流がないことを示唆する。次に、2,歌の違いにどのような遺伝的影響があるかを幼鳥の歌隔離によって検討した。幼鳥を隔離して飼育すると、正確な歌のコピーを聞く機会がないため、異常な歌をうたうことがわかっている。この歌は鳥の持つ生得的な歌鋳型をある程度反映すると考えられている。申請者は、地域ごとに隔離鳥を飼育しその歌を比較する予定である。これまでに歌隔離実験のためのセットアップを終え、幼鳥の歌を記録している。今後、幼鳥の獲得した歌を地域ごとに比べることで、歌鋳型に違いがあるかを検討する。また、隔離鳥の作成を続け、今後は歌学習への選好を実験的に明らかにする。
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Research Products
(2 results)