2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10624
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久方 瑠美 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 錯視 / 運動視 / 知覚心理学 |
Research Abstract |
本年度は、視野安定および物体の定位に関連する錯視として「蛇の回転錯視」と「運動による位置ずれ」錯視を実験的に検討した。蛇の回転錯視は、静止画であるにもかかわらず運動が知覚される錯覚で、黒、濃灰色、白、薄灰色の輝度パターンを円環状に繰り返し並べることでその方向に錯覚運動が生じる。実験では、この錯覚の空間特性を調べるため、刺激呈示偏心度および刺激パターンサイズを操作し錯視量を測定した。その結果、刺激パターンサイズが細かいほど錯視量は減少し、偏心度が大きいほど錯視量が増加した。この実験結果を空間スケーリングし、空間スケーリング係数を先行研究のスケーリング係数と比較した結果、視覚処理初期の機能から得られるスケーリング係数と錯視量のスケーリング係数がよく一致した。この結果から、蛇の回転錯視に関与する空間処理ユニットは視覚処理初期に存在すると推測できる。 次に「運動による位置ずれ」錯視について、位置ずれメカニズムが視覚処理のどの段階に存在するのかを実験的に検討した。この目的のためにプラッド運動(統合運動)によって位置ずれが引き起こされるのか測定した。プラッド運動とは、複数の運動成分(要素運動)の空間的重なり、または空間的近接によって生じる統合運動の一種である。プラッド運動の先行研究から、各要素運動は視覚処理初期で、知覚される統合運動は視覚処理後期で処理されることが明らかになっている。プラッド運動によって位置ずれが生じるということは、位置ずれメカニズムが視覚処理後期以降に存在することを示唆している。実験の結果、プラッド運動によって位置ずれが生じることが明らかになった。この結果から、視覚処理後期の運動情報が位置の知覚に影響を与えることが実験的に明らかにされた。
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