2009 Fiscal Year Annual Research Report
視覚運動が時間知覚・空間知覚に与える影響に関する心理物理学的解明
Project/Area Number |
09J10634
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 沙永 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視覚運動 / 運動速度 / 時間 |
Research Abstract |
本研究は、視覚情報のうち特に運動情報が時間知覚に与える影響について検討するものであった。近年、時間の長さ、時間的順序、リズム等の時間的側面を持った情報の知覚に対する関心が高まっている。これらの能力は日常生活において言語・運動の実行に欠かせないものであるが未だ明らかでない部分が多い。本研究は特にその中でも視覚情報の持続時間知覚に着目し、階層的情報処理を行なう視覚システムの中でいずれの過程が持続時間知覚に重要な役割を拠っているかを解明することを目的としていた。運動している物体の見えの持続時間が静止しているものよりも長く見えるというのは古くから知られた錯視現象であったが、古典的な実験刺激では移動距離など統制しきれない要因を排除できないという問題があった。この点を解決し、錯視発生に関与する情報処理過程を特定するために本研究員は実験刺激としてガボール刺激を用いた。この刺激は時空間周波数の限局された視覚刺激であり、時間周波数・空間周波数・運動速度のシステマティックな操作が可能である。これを用いて上記の錯視現象を実験的に検証した結果、視覚運動の持続時間は運動速度に依存し、速度が速い刺激ほど見えの持続時間が長くなることが明らかになった。ここから視覚的な時間の知覚は周波数情報から運動速度情報が算出された後の情報処理過程からの出力を利用して行なわれていることが示唆された。以上の結果は視覚研究の専門誌であるJournal of Vision誌に掲載された。今後の研究においては視覚情報の時間的側面のみならず空間的側面にも重点を置き、時空間上の相互作用について検対する予定である。
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Research Products
(1 results)