2010 Fiscal Year Annual Research Report
視覚運動が時間知覚・空間知覚に与える影響に関する心理物理学的解明
Project/Area Number |
09J10634
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 沙永 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 明るさ / 色 / 同時対比 / 時間特性 |
Research Abstract |
本研究は、明るさ・色知覚における周辺刺激からの影響の時空間的特性を心理物理学的手法を用いて実験的に検討するものであった。ある物体の明るさや色の見え方は空間的・時間的な文脈の影響を受ける.同時対比という錯視はこうした文脈からの影響の一つであり、例えば同じ灰色であっても,白い背景色の上ではより暗く,黒い背景色の上ではより明るく知覚される.同時対比は,これまで時間的に遅い現象であると考えられてきた.しかし近年,短い呈示時間においても見られるという報告も出されている。そこで本研究では空間的に隣り合った刺激からの明るさ・色知覚への影響の時空間特性をより詳細に検討した.研究の前半では瞬間的に呈示した刺激における明るさの同時対比を,後半では色の同時対比をそれぞれ検討した.実験は調整法を用いて行なわれた,被験者は、様々な輝度(もしくは色)を持つ円(周辺刺激)の中心に配置した直径1度のテスト刺激の明るさ(もしくは色)と等しく見えるよう比較刺激の輝度(もしくは色)をキーボードを用いて調整した,実験結果から,瞬間呈示刺激においても同時対比効果が見られ、さらにその錯視量が呈示時間が長い場合よりも大きくなることが明らかになった.明るさの同時対比に関しては,テスト刺激と周辺刺激との間に設けた空間的なギャップの幅が瞬間呈示条件でのみ錯視量に影響することが明らかになった.以上のことから,明るさの同時対比が遅いプロセスであるとは必ずしも言えず,局所的なコントラストに強い影響を受ける速い成分と、比較的広範囲の輝度分布から計算される遅い成分が存在していることが示唆された.色の同時対比に関しても同様の瞬間呈示における錯視量の増加が見られ、その錯視量は500ms呈示条件の3-4倍程度であった.周辺刺激はテスト刺激と等輝度(被験者毎に交照法により算出)で、色相は色処理過程の比較的初期段階である外側膝状体の色応答特性に則したDKL色空間上で無彩色点から8方向に操作されたが,いずれの色相もほぼ同等の錯視量の増加をもたらした.このことは,外側膝状体が同時対比効果の増加の発生に関与していることを示している.以上の研究結果の一部は,日本視覚学会2010年夏季大会においてポスター発表として報告され,ベストプレゼンテーション賞を受賞した.また,発表内容は講演要旨として学会誌VISIONに掲載された.
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Research Products
(2 results)