2009 Fiscal Year Annual Research Report
モノカルボン酸トランスポーター(MCT)を中心とした乳酸代謝に関する研究
Project/Area Number |
09J10637
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
北岡 祐 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 乳酸 / モノカルボン酸トランスポーター / 高強度トレーニング / 発育 |
Research Abstract |
サラブレッド6頭から中臀筋サンプルを縦断的に採取し、発育発達による乳酸代謝の変化について検討した。その結果、MCT1タンパク質量が発育により有意に増加したのに対し、MCT4タンパク質量に変化はみられなかった。酸化系の酵素であるクエン酸シンターゼ(CS)活性が有意に増加したのに対し、解糖系の酵素であるホスホフルクトキナーゼ(PFK)活性には変化がみられなかった。ミトコンドリアの増殖因子であるpgC-1αタンパク質量が発育により有意に増加した。また、乳酸からピルビン酸方向への反応を触媒する、心筋型の乳酸脱水素酵素(LDH)のアイソフオームの割合が有意に増加した。以上の結果から、サラブレッドは、発育により、解糖系の能力を維持しながら、酸化系の能力を獲得していくことが明らかとなった。それに伴い、乳酸を骨格筋へと取り込み、エネルギー源として利用する能力も獲得していくと考えられる。 また、別のサラブレッド12頭を用い、トレーニング及びデトレーニング(トレーニング休止)による乳酸代謝の変化について検討をおこなった。18週間の高強度トレーニングによって中臀筋におけるMCT1、MCT4タンパク質量がともに有意に増加した。また、CS活性が有意に増加したのに対し、PFK活性に変化はみられなかった。その後、6週間のデトレーニングによってMCT1、MCT4タンパク質量、およびCS活性はそれぞれトレーニング前のレベルにまで減少した。さらに、トレーニング前、トレーニング9週目、18週目、デトレーニング6週目、12週目時点で漸増負荷試験によるパフォーマンステストを行ったところ、走行時間とMCT4タンパク質量との間に高い相関関係がみられた。今回の実験結果により、サラブレッドにおいてMCT1、MCT4タンパク質量がトレーニングにより増加することが初めて明らかとされるとともに、高強度運動のパフォーマンスには乳酸を血中へと放出するMCT4が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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