2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10638
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 貴俊 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会不安(対人恐怖) / スピーチ不安 / ワーキング・メモリ |
Research Abstract |
対人恐怖症は日本人青年の独特な自我形成によって症状が規定されるという知見が提出されていたが,本年度に行った調査研究「(日本人)大学生の自我形成の特微」において,欧米で発表されているデータと比較したところ,顕著な違いは見出されなかった。このことから,文化的要因を対人恐怖の第一義的要因に据えることは不適当と考えられた。 対人恐怖(社会不安)の強い人では,その顕著は機能的低下として「発話の困難」ということが挙げられる。スピーチ不安と呼ばれる状態であり,一般には発話機会の前およびその最中に強い不安を感じる症状である。このような症状に対して,社会機能訓練などが効果的であることが知られているため,本研究では感情よりむしろ発話という「機能」に焦点を当てた。 強い不安(緊張)などにより「頭が真っ白になる」というような状態を心理学的に考究するため,ワーキング・メモリの観点から機能解析を行い,対人恐怖(社会不安)の強い人は,そうでない人に比べて発話のために用いられるべきワーキング・メモリの容量が少なく,不安定であることが見出された。このようなワーキング・メモリの機能的が,引いては発話における流暢性を阻害している可能性がある。現状ではこのようなワーキング・メモリ機能低下と発話における困難の間に直接的な因果関係を結ぶことは早計であるものの,対人恐怖(社会不安)の強い人がスピーチ前に不安を感じる主要因が,単なる「性格的」特徴というよりも,自身の発話に対する能力的・機能的側面への懸念というより具体的なタームによって理解される可能性が示唆された。 次に,発話という言語使用の場においてワーキング・メモリが機能低下するのであれば,それは言語に関わるメモリ(言語性ワーキング・メモリ)に特異的に生じるのか,という観点から研究を行った。ワーキング・メモリは言語性と非言語性(視空間性)のものに分けることが出来るので,対人恐怖(社会不安)の強い人とそうでない人において,その双方のワーキング・メモリを測定したところ,非言語性(視空間性)のものには差異は見られず,言語性ワーキング・メモリにおいてのみ対人恐怖(社会不安)の強い人で成績が低下していた。以上の結果より,言語(発話)に関連したメモリが何らかの影響により特異的に不安定になるという現象が見出された
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