2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J10638
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 貴俊 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 対人恐怖 / 社会不安 / ワーキングメモリ / 注意制御 / 言語情報 / 脆弱性 / 個人差 |
Research Abstract |
本年度は対人恐怖(社会不安)の不安情動に焦点をあて,不安が認知機能に及ぼす影響について検討を行なった。社会不安では情緒的な困難に加えて,発話が流暢に行なえないといった行動的・認知的な機能低下が問題化することが多い。このような現象について,不安がワーキングメモリ機能を損なうというモデルに立脚して説明することを試みるものである。研究1では,不安傾向の高い人にあっても,認知的なパフォーマンスが低下しない人がいるというデータに基き,不安の影響を受けやすい「脆弱性要因」を明らかにした。これにより,不安状態にない「平常時の」ワーキングメモリ容量が少ない場合に限り,不安による機能的阻害を受けることを確かめた。逆に,ワーキングメモリ容量の比較的大きい人では,不安の影響を受けても課題遂行に支障をきたさない。すなわち,不安とワーキングメモリ容量の交互作用によってパフォーマンスが規定される。次に,このような不安の影響がワーキングメモリ系のいかなる部分に及んでいるかを検討する研究として,注意を媒介としたプロセスがあることを確かめた。ワーキングメモリ系では注意の制御が大きな役割を果たしていると考えられるが,不安はこの注意システムにバイアスを掛けることにより行動レベルでのワーキングメモリ課題のパフォーマンスを規定していることが示唆された。以上の成果により,不安の認知活動への影響には脆弱性要因があること,不安が注意制御に対して阻害的に作用すること等が明らかとなってきた。これらを踏まえ,不安の悪影響を予防するためのターゲットが注意制御であるという臨床的に意義深い知見が得られたと言える。
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Research Products
(1 results)