2009 Fiscal Year Annual Research Report
コナカイガラムシ細胞内共生系における機能、相互作用、進化に関する研究
Project/Area Number |
09J10664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 まりゑ 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞内共生 / 共生細菌 / コナカイガラムシ |
Research Abstract |
コナカイガラムシは、昆虫菌細胞内部で二種の細菌が入れ子状に共生するというほかに例のない特異な共生系を維持している。多様な昆虫-微生物共生系においては、昆虫体内で同所的に複数細菌が共存している例は報告がある。しかし、細菌同士の安定的な細胞内共生関係は他に例が無い。そして、細菌様の細胞体同士による細胞内共生が、真核細胞への進化の契機であるという共生説は広く認められており、細菌間の細胞内共生の成立・維持機構の解明は生物進化の大きな課題である。 本研究においては、コナカイガラムシの持つ特異な入れ子状共生系を分子・生理・生態学の手法を用いて遺伝子から生態にいたる様々な側面から明らかにしていく。 具体的には、各細菌の機能などを調べるために、抗生物質を用いた共生細菌の選択的除去系統を確立し、宿主への影響を測定できる実験系を試行。この抗生物質投与にはインジェクションと経口投与の2つの手法があり、先にインジェクションによる実験系を試行している。 また、野外などでの採集により、多様なコナカイガラムシを集めている。現在飼育している系統は既に生活史上の共生細菌の時空間動態を明らかにしたが、同様の実験を行い、コナカイガラムシ全体での共生系のあり方を明らかにしつつある。 さらに、それら得られたコナカイガラムシについて顕微鏡を用いた詳細な観察を行い、ゲノム解析や細菌再導入実験などを組み合わせることで入れ子状共生系の成立機構を探求していく。 これら多面的アプローチを行うことで、コナカイガラムシ共生系の生物学的意義やその進化機構について明らかにし、生物進化に重要な細胞内共生について新たな知見を加え、さらにはカイガラムシ防除対策など応用的な広がりにもつなげていくことを目指している。
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