2011 Fiscal Year Annual Research Report
コナカイガラムシ細胞内共生系における機能・相互作用・進化に関する研究
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09J10664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 まりゑ 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞内共生 / 共生細菌 / コナカイガラムシ |
Research Abstract |
コナカイガラムシは、昆虫菌細胞内部で二種の細菌が入れ子状に共生するというほかに例のない特異な共生系を維持している。多様な昆虫-微生物共生系においても、細菌同士の安定的な細胞内共生関係は他に例が無い。そして、細菌様の細胞体同士による細胞内共生が、真核細胞への進化の契機であるという共生説は広く認められており、細菌間の細胞内共生の成立・維持機構の解明は生物進化の大きな課題である。 本研究においては、コナカイガラムシの持つ特異な入れ子状共生系を分子生物学的・組織学的手法を用いて様々な側面から明らかにしていくことを目的としている。 本年度は、主に2つの進展があった。1つはFerrisia属とMaconellicoccu属のコナカイガラムシの入手および共生細菌叢の解析結果であり、これによってコナカイガラムシ共生系の進化について新たな知見が得られた。もう1つは、人工餌上で一世代の飼育が成功したことである、これによって抗生物質による共生細菌除去系統の作成が見込めるようになった。 コナカイガラムシではほぼ全ての系統で昆虫-細菌-細菌の三層になる入れ子状共生系が成立しているとされている。しかし、Ferrisia属とMaconellicoccu属においては、これまで一次共生細菌のみが検出され、二次共生細菌が検出されていなかった。そこで、この2つの属のコナカイガラムシを入手し、共生細菌叢を調べたところ、Ferrisia属では二次共生細菌を持っていることなど新たな発見があった。 また、各細菌の機能などを調べるために、抗生物質を用いた共生細菌の選択的除去系統の確立を試行している。人工餌上でのコナカイガラムシの継代飼育が可能になったことで、抗生物質を混入した人工餌を用いて共生細菌を除去した系統を得られる可能性が非常に高くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は3点。1つは研究室を移った事により、類似研究実績の無い環境で新たに実験系を立ち上げることとなり、予想以上に時間かかったこと。また2つ目は、昆虫への抗生物質投与を当初インジェクションにより試行していたが、安定したサンプルを得るのが非常に困難だったこと。3つ目はFerrisia属のコナカイガラムシを得るのが難しく入手に時間がかかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Ferrisia属とMaconellicoccu属の共生細菌叢の更なる解析を行い、コナカイガラムシ細胞内共生系の進化について早急にまとめる。そして、抗生物質を加えた人工餌での飼育により、共生細菌除去系統を確立し、生態的指標にそって解析することで、共生細菌が宿主昆虫の生態に与えている影響を解明する。 さらに、現在飼育している様々な系統のカイガラムシ各々の共生細菌叢および体内分布や挙動などの系統・種間比較を行って共生系と宿主生態の関係を明らかにする。また、それらとゲノム解析や細菌再導入実験などを組み合わせることで入れ子状共生系の成立機構を探求していく。
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