2009 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ細胞分化の時空間秩序と安定性をin silico構成系から理解する
Project/Area Number |
09J10671
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 昭彦 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝子ネットワーク / ニューロブラスト / 神経幹細胞 / ロバストネス / 細胞選別 / セルラーポッツモデル / 緩和過程 / 協同性 |
Research Abstract |
1.経時的遺伝子発現を作り出す遺伝子ネットワークの解析 ショウジョウバエ神経幹細胞の経時的な遺伝子発現変化に関与する遺伝子で作りうるネットワーク構造の中から実験的に観察きれる遺伝子発現パターンを再現するものを、数理モデルの系統的な解析によって調べあげた。その結果、およそ一千万個のうちの400個ほどのネットワーク構造が実験事実を再現することができ、未知因子による遺伝子制御が必須なことを見つけ出すことに成功した。次に各ネットワークにおける発現の安定性を解析し、実際のショウジョウバエ転写ネットワークが非常にロバストな発現パターンを実現することを見いだした。これらの結果はショウジョウバエ神経幹細胞の遺伝子ネットワークがロバストな発現を形成するように進化したことを示唆しており、発生過程の時空間的パターン形成をシステムレベルで理解する上で重要な結果と考えられる。 2.細胞選別過程の動力学の解析 多細胞組織の区画化に重要である細胞選別の数理モデルの動力学を解析した。Cellular Potts Model(CPM)を用いた先行研究ではドメインサイズの成長則が対数的と報告されていたが、我々がCPMを用いて詳細に解析したところ、対数的ではなくベキ的に変化することがわかった。細胞比率が50:50の場合、べき指数はn=0.33で、比率が非対称の場合、n=0.26となった。非対称比率での遅い成長は、細胞塊が大きくなるにつれて拡散係数が急速に増大することで説明できる。これは細胞塊が他の細胞の間を通り抜けるには非常に時間がかかることを示唆している。次に、細胞の極性と自発運動を含むようモデルを拡張し、その動力学を解析した。拡張モデルでは,協調的な細胞運動が誘起され,べき指数は最大でn=0.9程度の値が得られた。この値は先行研究の実験結果とほぼ対応しており、細胞集団の協調的運動が細胞選別過程のすばやい進展に重要であると考えられる。
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Research Products
(7 results)