2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジル日系移民知識人の道徳言説と移民社会の構造変容の研究
Project/Area Number |
09J10682
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 剛二 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 移住 / 日系移民 / 日系人 / 文化人類学 / 民族誌 / ラテンアメリカ / 国際情報交換 / ブラジル:アメリカ |
Research Abstract |
本研究は、戦前・戦後におけるブラジル日系移民知識層の活動と言説、そして移民社会を巡る構造変容がそれらに与えた影響を検討することを目的とした。本年度は、特に二つの側面に光を当てて、研究、及び成果発表を行った。 まず、(1)1940年代から60年代のブラジル日系社会における移民知識人の活動の分析を通じて、移民による自己構築の二つの形態について明らかにした。このうち第一の形態は、戦後の日系移民社会において、山本喜誉司を中心とする「認識派」の指導者たちにみられたような、移民社会の統合に関わる政治実践である。一方、第二の形態は、1946年に活動を開始した移民知識人サークルの「土曜会」の活動にみられたような、移民自身による再帰的な知識生産である。今年度は、これらの指導者や知識人たちが、独自の回路と理論化を通じて、ブラジル日系移民社会の政治的・知的構築に寄与した動態を詳細に明らかにした。これについては『移民研究年報』に掲載された論文(2011年3月)の主題となったほか、「社会人類学研究会」(2010年12月)でもその一部を発表した。また、人類学と知識というより理論的なテーマに関して、日本文化人類学会の大会(2010年6月)においても口頭発表を行った。これらは、執筆中の博士論文にその議論が組み込まれている。 また、これと並行して、(2)2007年以降、深刻化した世界経済危機を契機として生じた在日ブラジル系移住者社会の構造変容に関する研究を行った。これは、前年度までに急激に進行した在日ブラジル国籍者の大量帰国を受けて、発展的な研究として行ったものである。ここでは、主に愛知県豊田市におけるフィールド調査(2010年9月)を通じてデータを収集し、アメリカ人類学会の大会(2010年11月)において発表を行った。この問題に関しては、平成23年度以降、日本学術振興会・特別研究員(PD)としてより詳細な探求を行うこととなった。
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Research Products
(4 results)