2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜脂肪酸環境の感知機構および恒常性維持機構の解明
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09J10724
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 祐介 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線虫 / 高度不飽和脂肪酸(PUFA) / 生体膜脂肪酸環境 / MAPK経路 / 熱ストレス応答 / 生体膜環境センサー / Na+チャネル様分子 / 膜貫通型キナーゼ様分子 |
Research Abstract |
同定したMAPK経路は、高温環境への適応に重要である 昨年度までに同定していた、線虫の生体膜脂肪酸環境変化時(PUFA欠乏時)に活性化するMAPK経路について、その生理的意義を明らかにするため、これまで報告のあるPUFA欠乏下における熱耐性増大の表現型とMAPK経路の関係を調べた。その結果、PUFA欠乏下での熱耐性増大には、MAPK経路の活性化が重要である事が分かった。さらに、Wild-typeの熱耐性においても調べた所、このMAPK経路は、獲得熱耐性という高温環境への適応機構に重要である事が分かった。また、既知の熱ストレス応答因子であるdaf-16,hsf-1とMAPK経路の関係について調べた所、熱ストレス時の遺伝子発現誘導、および熱耐性の獲得の両方において、これらが独立に寄与している事が明らかになった。 同定した膜タンパク質分子群は、PUFA欠乏時および熱ストレス時にMAPK経路の上流で機能する 昨年度までに、MAPK経路の上流で機能している可能性の高い膜貫通型タンパク質(生体膜環境センサーの最有力候補分子)として、Na+チャネル様分子TUM-1(Transmembrane protein Upstream of MAP2K)、TUM-2,TUM-3を同定していた。これら3分子は、遺伝学的に同一経路で機能しており、形質膜に局在し、複合体を形成することも示唆されている。そこで、これらの発現抑制下で、MAPK経路下流で制御されるレポーター遺伝子の熱ストレス時の発現を調べたところ、レポーター遺伝子は全く誘導されなかった。このことから、TUM-1,2,3は、PUFA欠乏状態および熱ストレス時に、MAPK経路の上流で機能している事が示唆された。今後の詳細な解析により、動物細胞における生体膜環境変化に対する応答機構が分子レベルで解明されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、MAPK経路の上流で機能する膜タンパク質(生体膜環境センサーの最有力候補分子)を同定し、さらにこの経路の生理的意義についても明らかにすることができた。これらの成果は、本研究の目的に十分に適うものである。ただし、生体膜環境変化の感知およびシグナル伝達の詳細な分子メカニズムの解析については、今後の重要な課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した生体膜環境センサーの、膜環境の感知機構について解析を行なう。具体的には、Na+チャネル様分子であるTUM-1のチャネル活性、および膜貫通型キナーゼ様分子であるTUM-2,3のキナーゼ活性について評価し、PUEA欠乏時や熱ストレス時にこれらの活性が変化するかどうかを解析する。この解析は、最終的にはin vitroの再構成系において実施することを目指す。 また、TUM-1は哺乳動物まで保存されているfamily分子に属する分子であるので、哺乳動物に機能的に相同な分子があるかどうかを検証する。具体的には、培養細胞系においてTUM-1の相同分子となりうる候補遺伝子の過剰発現系、発現抑制系を構築し、膜環境を変化させる刺激を加えた時のMAPK経路の活性化や熱ストレス耐性についての評価を行なう。
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Research Products
(7 results)