2010 Fiscal Year Annual Research Report
公共的文化資本としての博物館収蔵品の流動化に関する実証的研究
Project/Area Number |
09J10913
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
寺田 鮎美 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 博物館運営 / 次世代博物館モデル / 収蔵品の流動化 |
Research Abstract |
本研究は「公共的文化資本の流動化」に着目し、「分散可動型」による収蔵品管理の可能性と有効性を検証し、次世代博物館におけるオルタナティヴ・モデルの提案を行うものである。本年度は、研究目標を「次世代博物館におけるオルタナティヴ・モデルとしてのモバイルミュージアム方式の提案」とし、1)「分散可動型」の先進事例であるモバイルミュージアムの事例分析(継続)、2)モバイルミュージアム方式のモデル化のための調査・分析を中心に行い、最終的に博士論文としてまとめた。1)では、3つの事例を取り上げ、観覧者の利用実態把握と価値意識の変化、アクセス機会の拡大と満足度、観覧者ニーズに関する分析に取り組み、従来博物館に来なかったような観覧者や潜在的ニーズの掘り起こしに対する一定の効果、モバイルミュージアムに対する肯定的な意見や満足度(異化効果)、潜在的な観覧者に対する新しい鑑賞スタイルの提供可能性を明らかにした。2)では、モバイルミュージアム方式の具体的な導入方法の検討を行い、東京大学総合研究博物館関係者への詳細なヒアリング調査により、当該方式の実現・普及に向けた汎用性の高い実施モデル、タイムスケジュール、条件設定を行った。これにより、モバイルミュージアム方式に指摘される様々な構造的問題点(展示物選定、展示方法や場所の制約等)に対し、解決可能な運用方法を考察、提示した。このように、博物館収蔵品の流動化による高度利活用を目指し、本来博物館に期待されている公共的役割が果たせるようになるための方向性と方法論を探ろうとする本研究の目的に対し、次世代博物館におけるオルタナティヴ・モデルとしてのモバイルミュージアム方式について、実用的な条件整備及び展開案を提示した本研究は、新たな試みである当該方式を詳細に分析、整理したものとして類を見ず、博物館運営の一つの方向性を、その有用性も含め示したことはその成果といえる。
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Research Products
(2 results)