Research Abstract |
本研究では薬剤とその光吸収特性の異なる2波長帯のOCTを用い,生体組織内の薬量マイクロ断層分布を検出する2C-OCD法を提案してきた.しかし,2C-OCDの生体適用能力に関する検討が不十分であること,5分以上の計測時間を有すること,検出感度の向上といった課題があった.そこで(1)生体組織に対する2C-OCDの効果検証,(2)プローブの改良による計測システムの高時間分解能化,(3)超音波印加による2C-OCDの高SN化を研究目的とし,研究を遂行した.本年度は(1),(2)に対して成果が得られたため,以下にその内容について報告する. (1)生体組織に対する2C-OCDの効果検証に関して,動脈硬化症兎大動脈血管(高コレステロール食型及び遺伝子欠損型)と皮下腫瘍植え込みマウスモデルを用いたex vivo動物実験を実施した.専門医師の所見に基づいた病理画像診断結果とt検定による統計処理により,2C-OCDを用い動脈硬化プラーク及び癌組織を有意(p<0.001)にマイクロ断層検出可能であることが実証された.これより,日本人の死因の大半を占める血管疾患,悪性新生物に対する新たなマイクロ断層画像診断法として,2C-OCDが有用であることを示した.また,様々な疾患の発症メカニズムに関係を持つマクロファージと,2C-OCDより計測した薬量分布が類似傾向を示したことから,2C-OCDによるマクロファージ断層検出が示唆される付加的成果も得られた.なお,これら成果は論文投稿2件(内1件査読中),国内発表2件,国際発表1件にて成果発表を行った. (2)のプローブの改良による計測システムの高時間分解能化に関して,ガルバノミラーを用いた高速スキャニングシステムの構築を行った.これにより,従来5分以上を有した計測時間が1分以内に短縮されたため,2C-OCDの臨床適用性を飛躍的に向上することができた. (3)の超音波印加による2C-OCDの高SN化に関しては,本年度中に実験系の構築及びファントムを用いた基礎実験を実施予定であったが,(1)及び(2)の実施に伴う問題発生のため,計画通りの研究成果は得られなかった.
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