2011 Fiscal Year Annual Research Report
若年無業者における有能感とアイデンティティ : 青年期以降を含めた生涯発達的研究
Project/Area Number |
09J40024
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三好 昭子 筑波大学, 人間系, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 有能感 / アイデンティティ / 基本的信頼感 / 否定的アイデンティティ / 養育環境 / 心理的離乳 / 親子関係 / 友人関係 |
Research Abstract |
現代青年においては社会的自立の遅れが問題となっているが、その心理的なメカニズムは解明されていない。そこで本研究ではエリクソンの自我発達理論(Erikson,1950)を枠組みとして、首都圏に住む20~30代の未婚の男女551名(無業者218名/有業者333名)を対象としてインターネット調査を行った。有能感とアイデンティティ、および養育環境と心理的離乳(親への依存から離脱し心理的に自立すること)について、無業者と有業者を比較した。 1. 無業者の人格的特徴と心理的離乳の様相 無業者は有業者に比べて有意に有能感と基本的信頼感が低く、全体主義的に否定的アイデンティティを選択しており、充実感が感じられず、身体的にも精神的にも不健康であり、情緒的にも不安定であることが分かった。無業者はアイデンティティ確立という主題の達成の程度が低く、有業者に比べると親密性も有意に低かった。さらに無業者は有業者に比べて、養育者にあたたかく育てられたという認識が低く、親にもっと自分を理解してもらいたいと感じており、親と対等な人間関係を築いていなかった。もっと自分を理解してもらいたいというように関心が自分に向かっている状態では、他者と対等な人間関係を築くことができず、他者に関心を向ける必要のある有業者になることは難しいと考えられる。現代青年においては、あたたかくない養育環境が自我発達・心理的離乳の遅れの一因であり、社会的自立の遅れの要因であることを示した。 2. 無業者の親子関係と友人関係 無業者は有業者に比べて親しい友だちの数が少なく、友だちがひとりもいないと回答したのは、有業者では8.4%だったのに対して、無業者は35.8%(就業を希望しておらず求職活動をしていない無業者の場合は52.9%)だった。さらに仕事以外で一緒に行動することが最も多い人が「親」であると回答したのが、有業者では6.9%だったのに対して、無業者では24.8%であり、「友だち」や「恋人」と回答したのが有業者では51.0%、無業者では16.0%だった。無業者は有業者に比べて養育者にあたたかく育てられたという認識が低く基本的信頼感も低いことをふまえると、親子関係を基盤にして徐々に生活の範囲を広げ、社会とのつながりの中でアイデンティティ確立を達成していくことは困難だと考えられる。無業者は否定的アイデンティティを選択したまま、固着してしまう可能性のあることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)