2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J40042
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 朋子 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 量子化学 / 分子軌道法 / 密度行列 / 共役分子 |
Research Abstract |
量子化学計算は、既知の分子の性質や未知の分子の探索のための強力なツールとなって久しい。しかしながら、機能性分子候補の多くは共役分子であり、複雑な電子状態を表現するには膨大な基底関数を必要とすることがボトルネックとなり、これらの分子を解析するための量子化学手法は未だ確立されていないのが現状である。そこで本研究では、新規材料物質探索の新手法として確立することを目的とし、計算精度を保ちながらも、計算資源の軽減を可能とする、新規量子化学手法の開発を行っている。 これまでの研究では、計算に用いられる表現行列に対して疎であることを課すことにより、計算コストのボトルネックとなる行列要素の計算を軽滅した手法を提案した。しかしながら、この手法では共役分子を扱えるものの、本来のHartree Fock (HF)法に対して、数kcal/molの近似精度を保つためには、80%程度の行列要素を扱う必要があった。その一方で、疎である領域を増やし、近似レベルを下げると計算精度が劣化することも分かっている。さらに、効率的な部分分割の手法を取り入れていないため、現在の計算機が得意とする超並列計算には向いていない。このため、本手法をコストと精度のバランスのよい手法へと拡張を行った。 本手法では対象とする分子をM個の部分分子に分割し、疎行列を作った。拡張法ではこの個々の部分分子の2体の組み合わせに従って再分割を行いながら、M^*(M-1)/2回の疎行列による計算を繰り返す。こうして得られた1+M^*(M-1)/2個の電荷密度やエネルギーの情報から全系の情報を再構築する。これにより、開発された拡張法では、疎である領域を増やし、計算コストを軽減することが可能であり、落とされた情報は2体の計算から回復させることを可能とした。この拡張法を典型的な共役分子である、ポリエン鎖、アセン、フラーレンに適用し、数kcal/molの誤差でHF法の結果を近似できることを示した。
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Research Products
(1 results)