2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J40063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梅田 郷子 (大泉 郷子) 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 数学能力 / 数的志向性 / 自閉症特性 |
Research Abstract |
算数能力の高い人は自閉症傾向が高く,また自閉症者には,数に対する特別な関心が見られるというこれまでの先行研究(Baron-Cohen他,2001)を踏まえ,本研究では,自閉症特性と数的志向性(非公式な場面でも数や数学へ注意・関心を払う傾向),算数能力との関連性を明らかにし,算数が得意な人の認知基盤を解明することを目的としている.H22年度は,そのような問題意識をもとに,(a)数的志向性を測る質問紙および(b)数学能力を測る質問項目を新たに作成し,さらに(c)既存の自閉症特性を測る質問紙を翻訳したうえで,理工学部および文学部に通う大学生を対象に「数的志向性」「数学能力」「自閉症特性」の関連性を検討する一連の調査研究を行った.まず,数的志向性を測る質問紙について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行い,その結果,日常的な数への関心の方向性として,(1)数学への志向性と(2)数字への志向性の2種が考えられることがわかった.さらに,「数学能力」と「自閉症特性」との関連を分析した結果,結論として,(a)数学への志向性(日常的に数学的事象に対して関心を向ける傾向)の高い人は,数学能力も高く,コミュニケーションの困難を除く自閉症特性も高い傾向があった.(b)他方,数字への志向性は,数学能力や多くの自閉症の諸特性と関連が見られなかった.このことから,数字への志向性(ナンバープレートや時刻表など,身の回りの数字に対して強い関心を向ける傾向)については,全般的な自閉症特性を持つ人とともに,自閉症特性を持たない人たちにも広く共有される認知特性であることが本研究の結果から推測された。
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