2011 Fiscal Year Annual Research Report
F. メンデルスゾーンと近代的演奏会 : その成立と変遷の総合的実証研究
Project/Area Number |
09J40070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小石 かつら 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 演奏会 / メンデルスゾーン / ドイツ / 19世紀 / 公共 / ライプツィヒ / オペラ / ピアノ作品 |
Research Abstract |
市民社会の台頭とともにあらわれた「近代的演奏会」の成立と変遷を検証することで、「創造的」と言われる作曲家の創作活動が音楽マーケットと不可分の関係にあることを実証することが本研究の目的であるが、個別の音楽作品に関しては、交響曲全盛期にあって、交響曲よりずっと規模の小さい「演奏会用序曲」をメンデルスゾーンが数多く作曲したことに注目し、それらの作品の内容・成立・受容をさぐること、また、その「演奏会用序曲」がオーケストラ作品としてだけではなく、家庭用ピアノ作品に編曲されて受容されたことから、当時のピアノ作品の出版状況を調査するにあたって、メンデルスゾーンの未出版ピアノ作品に注目することで当時のピアノ作品受容状況、また、メンデルスゾーンの作品構想をさぐることに注力した。その結果彼は、当時の中心的ジャンルである「ソナタ作品」ではなく、二部分によって構成される作品を多く手がけ、その作品形態を完成させようとしていたことを発見した。これは、7月に出版された「F.メンデルスゾーンの初期未出版ピアノ作品:1820~25年の習作群を考察する」(『阪大音楽学報』所収)をもとに研究を発展させた研究であり、日本音楽学会全国大会にて「F.メンデルスゾーンの二部分形式作品:初期ピアノ作品におけるスタイル習得の過程」と題して発表した(2011年11月5日)。 「演奏会用序曲」に関しては、メンデルスゾーンの演奏会用序曲第二番「ヘブリディーズ諸島」Op.26の成立過程を調べる中で、各段階の稿に大きな相違点があることがわかり、イギリス・オックスフォード大学ボートリアン図書館、ロンドンの大英図書館等に残されている自筆譜や筆写譜を丹念に閲覧した。その結果、自筆譜に使われた紙質やインクの種類には検討すべき余地が多くあること、成立の空白期について調査する必要があることがわかり、次年度ひきつづいて解読・調査する。
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Research Products
(3 results)