2009 Fiscal Year Annual Research Report
中枢シナプス伝達の発達における神経栄養因子の作用-電気生理と分子可視化法を用いて
Project/Area Number |
09J40076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷 真紀 Hokkaido University, 電子科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 脳由来神経栄養因子 / バーグマングリア / 蛍光イメージング / 小脳 / 発生 |
Research Abstract |
中枢神経系の発生・発達過程には様々な制御因子が関与するが、神経栄養因子は極めて重要な因子の一つである。脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor : BDNF)の小脳発生における生理作用、特にライブイメージングを用いた研究に関する報告は極めて少ないのが現状である。本研究はBDNFが小脳の発生に重要な機能を担うバーグマングリア細胞に対する生理作用について分子イメージングと電気生理の手法を用いて明らかにするものである。急性スライス標本と超高感度の光学顕微鏡観察により蛍光標識BDNF(Cy3-BDNF)がバーグマングリアの突起部分へ特異的に結合することを見出した。細胞外液のpHを通常の7.0から4.0まで下げると細胞表面に露出したBDNFとその受容体(BDNF-TrkB)の結合が外れることを利用し、BDNF-TrkBが細胞内に取り込まれたか検討したところ、蛍光像にほとんど変化が見られなかったことから、BDNF-TrkBはエンドサイトーシスによってバーグマングリアの細胞内に取り込まれていることが示唆された。バーグマングリア突起上の蛍光輝点の追跡を行ったところ、細胞体から突起先端方向へ移動(順方向輸送)するものが3%、突起先端から細胞体側へ移動(逆方向輸送)するものが81%であった。このことから、突起上でBDNFが受容体と結合して細胞内に取り込まれた後、大部分の小胞が逆方向輸送によって細胞体へと輸送されることが明らかとなった。 異なる発生段階にあるニワトリ胚から取り出した急性小脳スライス標本にCy3-BDNF 2nMを投与したところ、受精後14-17日の胚から取り出した小脳においてCy3-BDNFの結合が観察されたが、それ以外の発生ステージでは観察されなかった。このことからBDNFのバーグマングリアに対する結合には発生の時期特異性があり、小脳神経回路形成時に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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