2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会統合の文化差についての社会ネットワークアプローチ:信頼・寛容性概念に注目して
Project/Area Number |
09J40121
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針原 素子 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 社会統合 / 文化比較 / 信頼 / 寛容性 / 社会ネットワーク / アメリカ / 韓国 |
Research Abstract |
近年、日本人はアメリカ人と比べて、他者一般への一般的信頼が低いことが指摘され、日本社会の流動性の低さによって説明されてきたが(山岸,1998など)、一方で、典型的には閉鎖的な社会として知られる韓国で、人々の一般的信頼がアメリカ人よりも高いという謎も提起されている(Sato,2006)。そこで、本研究では、人々の見知らぬ他者との関わりの文化差について捉え直し、その文化差をネットワークの違いによって説明することを目的としている。まず、見知らぬ他者との関わり方を行動レベルで測定するため、地下鉄内でフィールド・リサーチを行った。東京の地下鉄内でのべ21日分の観察を行った結果、昨年度行ったニューヨークとソウルでの観察と比較して、日本人は、席を譲る、乗り換えについて尋ねる、近くの人と会話するなどの見知らぬ人との相互作用を行わないことが分かった。日韓で行った社会調査データの二次分析を行ったところ、韓国では「他の人の視線を気にしてマナーを守る」のは、見知らぬ他者に対して肯定的な態度を持ち、他者や社会に積極的に関わる人であるのに対し、日本では、他者に不寛容で世の中のことよりも私生活を重視する人であった。以上のことから、日本では、マナーを守るという意識が他者への好意的な働きかけではなく、他者には関わらないという形で現れていることが示唆された。また、同じく日韓の社会調査データから、日本においてのみ、人づきあいが地理的に広く分散している人ほど、社会参加が不活発であることが示され、所属集団を超えた社会全体のつながりが弱いことが示唆された。韓国の大学生への質問紙調査の分析では、学校外の活動を通じたネットワークが広い人ほど、見知らぬ他者へも働きかけることが示され、韓国では、所属集団を超えたネットワークが他者一般への肯定的態度を醸成しているという可能性が示された。
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Research Products
(3 results)