2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物の二つのリン獲得機構:菌根とクラスター根のコスト・ベネフィット比較
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09J40176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 幸子 (舟山 幸子) The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | リン / クラスター根 / シロバナルピナス |
Research Abstract |
リンは植物にとって重要な栄養塩である。リン酸吸収効率を高めるために、約82%の陸上植物の種が菌根を作るのに対し、少数の種はクラスター根を形成する。クラスター根はリン酸が極端に少ない環境では有効だが、それ以外の環境では、形成や維持にかかるコストが高いため、不利になる可能性がある。 本年度は、クラスター根の形成と維持にかかるコストの定量をめざし、まず異なるリン酸条件で2種のルピナスを育て成長と根や葉の性質を調べた。シロバナルピナスLupinus albus(以下、シロバナ)はクラスター根を作るが、ホソバルピナスL.angustifolius(以下、ホソバ)は作らない。主な成果は以下の通りである。 (1)根への物質分配とクラスター根形成:シロバナもホソバも、高リン酸条件(High phosphate,HP)に比べ、低リン酸条件(Low phosphate,LP)で根への物質分配が増加した。LPでもHPでも、シロバナの根への分配はホソバより多かった。LPのシロバナでは、多くのクラスター根が形成された。 (2)葉の性質と個体の成長:シロバナは、LPで葉のクロロフィル量が減少した。ホソバのクロロフィル量は、HPでもLPでもシロバナより多かった。ホソバの相対成長速度は、HPでもLPでもシロバナより大きかった。 以上から、シロバナは、成長や葉の光合成に関係する性質より、根のリン酸吸収を高める方を優先させている可能性が高いことが明らかになった。 (3)リン酸量:HPとLPのシロバナ、ホソバの葉のリン酸量を測ったが、LPでは検出限界以下のサンプルがあった。 リンは、植物内でリン酸だけでなく、様々な化合物(核酸、リン脂質、糖リン酸など)として存在する。(3)の結果をふまえ、本研究では、全リン量を測定する必要があると考えた。そのため、湿式分解装置を購入し、現在、全リン量測定のプロトコルを作成している。
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Research Products
(1 results)