2009 Fiscal Year Annual Research Report
極低温電子顕微鏡によるべん毛タイプIII蛋白質輸送装置の構造解析
Project/Area Number |
09J55342
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川本 晃大 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛋白質 / 電子顕微鏡 / トモグラフィー |
Research Abstract |
サルモネラ菌のべん毛を研究材料として、蛋白質輸送過程における輸送装置の立体構造および蛋白質間の相互作用を捉えることによって、輸送装置のダイナミックスと効率的なべん毛蛋白質の輸送メカニズムを解明することを目的として研究を行った。輸送過程初期段階では、輸送装置の一部であるFliH/FliI複合体が基部体Cリング上を絶えず結合解離を繰り返すことで、輸送過程が進行していくことが提唱されている。本年度は、基部体とFliH/FliI複合体を別々に単離精製し、輸送過程の初期段階を再現するために、両者を混合し再構成する条件の検討を行った。構造解析には、位相差電子顕微鏡を用いて行った。 FliH/FliI複合体を精製し、混ぜ合わせることで輸送過程初期段階のFliH/FliI複合体の観察に成功したが、その効率は極めて低かった。そこで架橋剤で固定された試料を密度勾配遠心法によって分離することができるGraFix法を用いて、FliHとCリング構成蛋白質の一つであるFliNとの相互作用の安定化を行い、試料が存在する画分を濃縮することで、基部体Cリング上に結合したFliH/FliI複合体の電子顕微鏡像を効率良く撮影することに成功した。架橋化したFliH/FliI複合体はCリング上、様々な部位に結合し、数や方向もばらつきがあったため、不均一な試料でも構造解析が行える電子線トモグラフィーと、極低温電子顕微鏡を組み合わせることで、より機能状態に近い状態での立体構造解析を行った。構造解析の結果、FliH/FliI複合体がCリングの縁もしくは内側に結合していることが明らかになった。輸送過程初期段階の構造情報が明らかになったことで、今後の輸送装置の構造解析や構造変化の予測が容易となり、輸送メカニズム解明の足がかりとなることが期待される。
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Research Products
(6 results)