2010 Fiscal Year Annual Research Report
重油由来の多環芳香族炭化水素による免疫抑制が魚類感染症の発生に与える影響
Project/Area Number |
09J55432
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宋 準榮 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / BaP / 免疫毒性 / アリールハイドロカーボン受容体 |
Research Abstract |
申請者は、これまでに重油が魚類に免疫毒性を示し、感染症を誘発することを明らかにした。重油は多様な化学物質の混合物であり、その成分中では、多環芳香族炭化水素(PAHs)が免疫毒性を示すことが知られている。しかしながら、PAHsがどのようなメカニズムでその毒性を発揮するのかについての知見は乏しい。代表的なPAHであるベンゾ[a]ピレン(BaP)は水酸化酵素であるCYP1A1の発現を誘導し、免疫毒性を誘発すると推測されている。本酵素はBaPが受容体であるアリールハイドロカーボン受容体(AhR)に結合することで誘導されると考えられるが、魚類白血球においてAhRの存在そのものが明らかにされていない。そこで本研究では、魚類白血球におけるAhR2遺伝子の存在をin situ hybridizationで明らかにするとともに、BaP暴露後のAhR2α・β遺伝子の発現変化を調べた。 ニジマスの頭腎および脾臓からフローサイトメーターで白血球を単離した。対照実験として、肝細胞を用いた。これらを培養し、0.1および1μMの濃度でBaPを24時間暴露した。その後、AhR2αおよびβを検出できるプローブを設計し、in situ hybridizationを行った。また、CYP1A、AhR2αおよびβ遺伝子を個別に検出できるリアルタイムPCRの系を確立し、その発現量を定量した。 in situ hybridizationの結果、BaP暴露の有無に関わらず、肝細胞および白血球から特異蛍光が観察され、世界で初めて魚類白血球からAhR2遺伝子の検出に成功した。リアルタイムPCRの結果から、1μM暴露区のCYP1A遺伝子の発現量は、肝細胞および頭腎白血球で、対照区と比較して、それぞれ、28.6倍および5.6倍有意に増加した。AhR2αおよびβ遺伝子については、いずれの実験区においても有意差は認められなかったものの、肝細胞および頭腎白血球ではこれらの遺伝子の発現量が濃度依存的な増加傾向を示した。このことから、BaPの免疫毒性機構として、BaPがAhR2に結合することでCYP1Aが誘導され、その代謝物が免疫毒性を示していることが示唆された。
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Research Products
(7 results)