Research Abstract |
本研究の目的は,鳥類における「関係性の理解」を観察・実験を通して検討することである.霊長類以外の社会性動物を用いてこのような高次認知能力を検討することで,霊長類に見られる高い知性の起源を探ることが可能になる.本研究では,社会性鳥類であるセキセイインコを被験体として,群れの個体間にどのような関係性が築かれるか,第三者同士の関係性の理解は可能か,安定的な関係性はどのようにして維持されるかということを調べる.平成21年度の研究によって,セキセイインコが第三者のつがい関係を理解することが示された.そこで平成22年度は,セキセイインコがつがい関係をどのようにして維持しているかを調べた. 安定的な関係を維持するには,個体間で生じる葛藤を早期に解決していくことが必要である,これまでに霊長類が,攻撃交渉などで生じた葛藤を,当事者間(仲直り)または第三者との間(慰め,宥めなど)での親和交渉を行うことによって解決していることが報告されてきた(de Waal & Aureli 1997).このような攻撃後親和交渉が関係性の修復に寄与しているなら,一夫一妻のセキセイインコにおいては,攻撃後親和交渉が「つがい関係」で特異的に生じると予測した.そこで,セキセイインコを用い,攻撃交渉後の親和交渉がどの個体間に見られるかを調べた.攻撃交渉を行ってから次に親和交渉を行うまでの時間を記録し(実測値),それをランダムに親和交渉が行われる場合(シミュレーション値)と比較した.その結果,攻撃交渉の後の親和交渉は,攻撃交渉直後の30秒間に特異的に生じていること,攻撃後親和交渉は当事者間(つがい相手のみ)でのみ生じること,が分かった.このことは,セキセイインコにおいて,攻撃後親和交渉が安定的なつがい関係を維持することに寄与することを示すものである.
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