2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J55562
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
一方井 祐子 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セキセイインコ / つがい関係 / 婚外交尾 / EPC / 第三者 / 関係性 |
Research Abstract |
複雑な社会で生きていくためには,個体は様々な認知能力を使い状況に応じた行動を取ることが必要である.これまでにヒトを含む霊長類で「関係性の理解」という認知能力の存在が報告されており,第三者同士の関係を理解する能力は霊長類における高い知性の現れであると考えられてきた.しかしながら近年,社会性哺乳類や鳥類においても,第三者同士の関係理解が可能であるという報告が増えている.例えばカラスの仲間であるカケスでは,第三者同士の優劣関係の理解が報告された(Paz-y-Mino et al.2004).高い知性の起源が複雑な社会にあるのであれば,霊長類と同様に複雑な社会を築く鳥類においても霊長類に匹敵するような認知能力が見られる可能性が高い. 本研究の目的は,「関係性の理解」という認知能力を鳥類で調べ,このような高次認知能力がどのように進化してきたかを検討することである.本年度は,個体間関係の中から特に「つがい関係」に注目し,社会性鳥類であるセキセイインコが第三者同士のつがい関係を理解するか調べた.セキセイインコ社会の複雑性の一つに,婚外交尾(EPC)という繁殖形態がある(Baltz & Clark 1997).オス個体がEPCに成功するには,適切な機会を狙って婚外メス個体への親和交渉を行う必要がある.もしオス個体が第三者同士のつがい関係を理解しているならば,つがいオスから一時的に孤立したメス(孤立メス)に対して選択的に親和交渉を行うことが予測される.つがいオスを除外した結果,群れに残ったオスから(既婚の)孤立メスへの親和交渉が選択的に増加した.しかし,独身メスへの親和交渉は増加しなかった.このことは,オスの親和交渉が第三者間の関係性認知に基づくことを示すものである.
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Research Products
(4 results)