2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J55592
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
仁井田 千絵 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 映画史 / ラジオ史 / 1920年代 / 公共性 / 映画興行 |
Research Abstract |
「1920年代における映画とラジオの関係-劇場空間における音声の受容の点から」 研究目的:従来の映画史においてラジオが取り上げられる場合、それはサウンド移行期における技術・産業面での影響に限定されていた。本研究では、サウンド移行期以前の段階で、ラジオが映画史にどのように関わってくるのかを、公共の場における音声の受容の点から考察した。 研究方法:調査としては、これまで収集した1920年代における映画館の興行形態に関する記事に加え、資料が不十分だったラジオの業界紙にみられる記事の収集を行った。具体的には、イェール大学図書館が所蔵するラジオ業界紙『ラジオ・ニュース』、アメリカ歴史新聞データベースを対象とした。 研究成果:調査の結果、以下の二点が明らかになった。(1)1920年代に始まったラジオの普及は、演劇、映画といった劇場空間を必要とする興行物に対し、家庭というプライベートな空間で受容される点で革新的であった。ラジオは従来の家庭の娯楽である蓄音機を置き換えていくのと同時に、映画産業からは興行成績にダメージを与える脅威として捉えられた。(2)一方で、ラジオ放送のためのマイクとアンプは、1920年代を通して公園、教会、講堂といった公共の場に導入されるようになる。演説や音楽をより広い空間に伝達するためのマイクとアンプの設置は、映画上映に加えてライヴの音楽演奏を必要とした映画館においても見られるようになった。結論として、1920年代後半の映画におけるサウンド・システムの導入とその上映形態の変化が、公共の場でマイクとスピーカーを通した音声を聞くというラジオによって一般化された流れの中で捉えられることを示唆した。
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