2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J56022
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 雄二 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 譲渡担保 / 実行手続 / 担保 / 営業質 / フランス担保法 / 質権 |
Research Abstract |
本研究は各種担保の実行手続から各種担保の利用目的を究明し、そこでえた知見を参考として、取引関係者の利害を調整しつつ実行の簡易迅速性を図る譲渡担保権実行手続を呈示することを最終目標としてきた。そのために昨年度に実施した研究は以下である。第一に、民法典上の質、営業質屋、商事質にわたる質制度研究を進展させた。特に営業質屋については質屋への聞き取り調査を行った。現行商法典に規定がない商事質については、その規定のあった旧商法典上の商事質、その起草理由、母法(ドイツ旧商法典、フランス民法典上の動産質、イギリス法)を調査した。また現行法典上に残る質入証券の展開を旧商法典時代から研究した。第二に、所有権留保、特にオートローンについて自動車メーカーに聞き取り調査を行った。第三に、フランスの営業質研究を引き続き行った。主だった以上の研究の意義・重要性は以下の通りである。各種質権やその他非典型担保を併せた研究作業の過程で、清算義務の有無は担保権者にとって限定的な意味しかもたないことが明らかになった。このことは譲渡担保の担保的構成に対する問題提起である。またフランス営業質の研究からは営業質の設定目的の確実な達成(元利回収の確実性等)が簡易・迅速性よりも重視されていることが明らかとなった。そうであるならばたとえ、迅速性を多少後退させても担保の利用の障害とはならない。このことは譲渡担保の実行時の設定者への通知義務、とりわけ譲渡担保権者の債権者が譲渡担保目的物を差押えた場合(最判平成18年10月20日民集60巻8号3098頁)に設定者に差押えの通知がされず、受戻権行使の機会が保障されないことへの問題提起ともなる。 以上により、本研究の最終目標を、担保の目的達成を確実にしつつ実行の簡易・迅速性と取引当事者との利害調整を図るという方向に微調整し、そのための研究が大きく前進した。
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