2011 Fiscal Year Annual Research Report
らせん対称性を用いた第一原理電子構造計算によるカーボンナノチューブの系統的研究
Project/Area Number |
09J56261
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
加藤 幸一郎 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 密度汎関数理論 / 幾何構造 / 電子構造 / エネルギー論 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブはナノサイエンス・ナノテクノロジーの担い手として大きな注目を集めている物質である。しかし、その構造は円筒の直径だけではなく円筒表面の炭素原子の配置にらせん度を有するため無限の構造パターンが考えられる。そのため直径・らせん度が均一な試料が未だ得られておらず、基本的な物性値(構造パラメータや電子特性)の精密な測定ができない状況にあり、均一な試料作製に向けて精力的な研究が行われている。一方、理論研究においては、従来広く用いられている密度汎関数理論計算プログラムが並進対称性を用いているため、近年実験的に合成されやすいとされている特定のナノチューブを含む系統的な研究を現実的な時間内で展開することは困難な状況にある。そこで我々は、カーボンナノチューブが持つらせん対称性に着目し実験的に合成されやすいナノチューブも含めて系統的な議論を可能とする計算プログラムの作成を行った。そして、本年度においてはその計算プログラムを種々のナノチューブに適用し、広い直径領域を網羅した系統的な物性予測研究を行った。得られた結果としては、構造パラメータの直径依存性における周期的な変化を見出しただけでなく、電子特性においても同様の周期的な変化を定性的・定量的に示す事に初めて成功した。また、エネルギー論による安定性を分析した結果、実験的に合成されやすいと報告されている特定の構造を持ったナノチューブが、他のナノチューブに比べて安定である事も明らかにした。このナノチューブの構造そのものに起因する安定性の違いというのは、これまで全く議論されてこなかったものであり、非常に重要な知見であると考えられる。
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Research Products
(10 results)