Research Abstract |
各班の進捗状況の概要は以下のとおりである。 総括班: 国際シンポジウム(「言語研究と世界のシソ-ラス」)を行った。また,研究報告会を実施し,本プロジェクトの評価および企画推進に努めた。 研究班1(センサス): 「日本語観国際センサス」の第2次調査を実施した(中国,モンゴル,台湾,インドネシア,フィリピン,ベトナム,インド,イスラエル,エジプト,トルコ,ロシア,ナイジェリアの12カ国で実施)。また,第1次調査データの整理,分析を開始し,一部集計結果を学会等で発表した。また,事例調査として「ラテンアメリカにおける邦字新聞の史的,言語的変遷」,「海外マスメディア公告における日本語研究」に関して調査および研究会を継続して行った。「災害時言語対策に関する研究」について調査,研究会を継続した。 研究班2(文化摩擦): 1.理論的研究 国際的視野にもとづく日本語形成史,国際関係における言語の位置についての理論的研究とともに,海外におけるマイノリティーの言語状況,国内の日本語非母語話者と日本語母語話者との言語的接触,国内外の地域ネットワーク,日本語母語話者間の変異の調査を3年間にわたって実施した。これに基づいて文化摩擦の理論的展開を収束すると同時に,これらの研究・調査から日本語の「国際性」を定式化し,文化適応の型,適応の方策のモデル化を模索した。 2.社会言語学的研究 国内調査(1):在日日本語非母語話者を対象として,調査を継続した。国内調査(2):日本国内各地域の日本人を対象として場面を拡大して調査を継続した。国内調査(3):平成8年度と同一の地域において参与観察を継続した。国外調査:海外に在住する日本語母語話者を対象として,平成8年度と同様の調査を継続した。対象地域はブラジル・ベトナム。 研究班3(実験言語): 1.文字言語研究 (1)語の主観的表記頻度についての調査,分析とデータベース化を進めた。(2)日本語の主観的表記頻度の年齢変化の研究および主観的表記頻度の認知心理学的検証研究を行った。(3)認知実験用の漢字頻度基準表と心理学的言語属性との相関分析を行った。(4)ノイズに埋もれた漢字と仮名の認知に関する心理実験を行った。(5)日本語認知に関する綿密な文献目録作成を継続した。 2.音声言語研究 (1)Macintosh上で開発した日本語韻律知覚生成習得支援プログラムをインターネット,Windowsでの利用のためソフトの書き換えを行った。(2)研究成果を国内外の学会等で発表した。(3)韻律知覚生成プログラムの試行データを収集し,プログラムの改善を行った。(4)国内外で収集した韻律知覚テスト結果を学習者の母語別方言地域別にデータベース化した。 3.計算機実験研究 (1)分類語彙表[増補版]を機械辞書として使用するために情報を追加し,表記変換のプログラム作成を続けた。(2)中国人による日本語作文,日本人による中国語作文で得られたデータの中国人・日本人による添削を終了。(3)英国在住の日本人による英語作文の分析を行い報告書を執筆。(4)分類語彙表を代表とする各種言語のシソ-ラスに関する国際シンポジウムを開催した。 研究班4(情報発信): 1.同時通訳技法の体系化 「放送通訳の日本語」受け手調査(NHK放送文化研)を実施し,分析結果を報告書として刊行した。 2.コーパスの作成 雑誌『太陽』1909年1〜4月号のデータ入力,試験的にルビを入力した。また,対訳辞書『英華字典』のデータ入力についての実験研究を行った。 3.漢字コードの考察 属性情報(漢字の読み,画数,部首,国名)を符号化する実験を行い,漢字符号と関連付けた処理が重要であることを確認した。また,昭和41年度新聞記事の切り抜き約12,000枚をイメージ入力し,データベース化を行った。 4.言語教育方法の確立 以下の3点について研究を進めた。(1)日本の音声言語教育の振興,(2)国語以外の教科に関する教科書の言語表現,(3)帰国子女,外国人子女への日本語教育。
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