インドから中国への仏教美術の伝播と展開に関する研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10041019
• Research Category: Grant-in-Aid for international Scientific Research
• Section: Field Research
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 宮治 昭 名古屋大学, 文学部, 教授 (70022374)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中川原 育子 名古屋大学, 文学部, 助手 (10262825) ; 山岸 公基 奈良教育大学, 文学部, 助教授 (90242792) ; 定金 計次 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (40135497)
• Keywords: 四川省 / 密教五仏 / 変化観音 / 浄土図 / 大日如来 / オリッサ / ラトナギリ / アマラーヴァティー

Research Abstract

(1) 研究代表者および研究分担者は、本年度の実地調査地である中国四川省、南インド、オリッサの美術作品に関する文献、写真資料を網羅的に収集し、5月の最初の研究会において、研究テーマに関する全体的な研究の方向性、取り上げる図像の特色、問題点について話し合い、7月、11月の研究会において具体的な調査地の選定、日程、調査方法について検討した。
(2) 研究代表者および研究分担者は、8月下旬から9月半ばにかけて、中国四川省の代表的な博物館と仏教遺跡を調査した。本研究テーマと関わる重要な遺跡として、まず、(1)成都市周辺:〓峽石荀山、花置寺、盤陀寺、(2)広元、巴中を中心とする地域:広元千仏崖、広元皇澤寺、巴中南龕寵等、(3)大足、資中を中心とする地域:大足宝頂山石窟、北山石窟、資中重竜山君子泉等、 (4)楽山、眉山を中心とする地域;夾江千仏崖、丹稜鄭山摩崖造像、劉嘴摩崖造像等を重点的に調査した。阿弥陀三尊五十二菩薩図、阿弥陀浄土図及び変化観音の四川地域での流行と分布状況、図像のヴァリーエションの把握、中原、敦煉との様式的、図像的影響関係、あるいは直接的にせよ間接的にせよインド影響の存在を例証する作例、インド、日本における密教研究の中でその存在が予想されるにすぎなかった中国の中期密教遺例が見出されたことなど、多くの興味深い事例が確認された。
(3) 研究代表者および研究分担者は、12月半ばから1月にかけて南インド、オリッサ地域の代表的な博物館、遺跡、収蔵庫を調査した。すなわち、南インドでは、ナーガルジュナコンダ、アマアーヴァティーを中心とする仏教遺跡、その他ジャッガャペッタ、グントゥッパリ、ガンタシャーラ、ボージャナコンダ、リンガラコンダ等、あるいはオリッサの密教造像との関わりを有するシャーリフンダムの遺跡と作品、オリッサではラトナギリ、ラリタギリ、ウダヤギリを中心に密教五仏、変化観音、八大菩薩等の作例を中心に調査した。(799字)

Research Products

• [Publications] 宮治昭: "信仰と苦行-ブッダの修行と身体-" ブッダ大いなる旅路,日本放送出版協会. 第1巻. 111-116 (1998)
• [Publications] 定金計次: "エローラ石窟における文殊菩薩図像の展開(上)" 古代文化. 50巻6号. 30-41 (1998)
• [Publications] 定金計次: "エローラ石窟における文殊菩薩図像の展開(下)" 古代文化. 50巻7号. 33-43 (1998)
• [Publications] 定金計次: "インド仏教石窟の変遷" ブッダの道「祈りと美」の遺産(別冊歴史読本92). 92. 24-35 (1998)
• [Publications] 定金計次: "ガンダーラ美術と仏像誕生" ブッダの道「祈りと美」の遺産(別冊歴史読本92). 92. 36-47 (1998)
• [Publications] 山岸公基: "阿修羅の手" 月刊奈良. 38巻11号. 140-141 (1998)
• [Publications] 中川原育子: "シルクロードの仏教美術" ブッダ 大いなる旅路,日本放送出版協会. 第3巻. 100-110 (1998)
• [Publications] 中川原育子: "クチャ地域の供養者像に関する考察-キジルにおける供養者図の展開を中心に-" 名古屋大学文学部研究論集(哲学). 45. 89-120 (1999)
• [Publications] 宮治 昭: "仏教美術のイコノロジ-インドから日本まで-" 吉川弘文館, 266 (1999)