1998 Fiscal Year Annual Research Report
現代アフリカにおける文化運動とエスニシティの人類学的研究
Project/Area Number |
10041055
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Field Research |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 助教授 (10192808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 和明 立教大学, 文学部, 教授 (10257157)
竹沢 尚一郎 九州大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10183063)
江口 一久 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (90045261)
端 信行 国立民族学博物館, 先端民族学研究部, 部長教授 (90044742)
和田 正平 甲子園大学, 人間文化学部, 教授 (50110086)
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Keywords | アフリカ / エスニシティ / 文化運動 / 伝統の創造 / アイデンティティ / 出稼ぎ / デイアスポラ / 先住民権運動 |
Research Abstract |
アフリカにおいては、現在、民族の伝統を再編し、新たな文化を創造しようという文化運動が各地で活発化しつつある。本研究は、そうした文化運動に焦点をあて、それによるエスニシティ形成のメカニズムを明らかにしようとするものである。3年計画の初年度にあたる今年度は、次の4つのテーマについて集中的な調査をおこなった。 1) 伝統の再編による新たな祭りの創造とエスニシティ形成の関係 ザンビア・ンゴ二社会およびチェワ社会、南アフリカ・ンデベレ社会 2) 出稼ぎ労働にともなう民族的アイデンティティの高揚とその発現形態 セネガル・ソニンケ社会、タンザニア・ニャキューサ社会 カメルーン・フルへ社会、ブルキナファソ・ヌヌマ社会 3) グローバルな先住民運動と連動したかたちでの土地権請求運動とエスニシティの関係 南アフリカ・コイサン社会 4) 伝統工芸の観光産業化にともなうエスニシティの拡散 タンザニア・マコンデ社会およびマクア社会 一連の調査により、現代のアフリカにおいて進行しつつある大規模な人と物、情報の移動が、諸民族のあいだに「自己の文化」「自己の歴史」に対する覚醒をうながし、土地権請求運動や民族単位の新たな祭りの創造など、多様な文化運動を生み出しつつある一方で、特定の経済的・政治的状況下においては、そうした運動がむしろ疎外され、エスニシティの拡散現象を生み出している実態も明らかになった。また、文化運動の動向の把握には、アフリカの内部だけでなく、ディアスポラにおける民族意識のありかた、欧米における先住民権支援運動の様態の研究が不可欠であることも浮かび上がってきた。エスニシティの凝縮と拡散というふたつの相反する同行が生み出される社会的・文化的背景を、グローバルな視点から把握することが、今後の本プロジェクトの重要な課題になると考えられる。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] 吉田 憲司: "フィールド・ワークとしての展示-特別展「異文化へのまなざし」の記録・抄-(上)" 民博通信. 82. 38-60 (1998)
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[Publications] 吉田 憲司: "フィールド・ワークとしての展示-特別展「異文化へのまなざし」の記録・抄-(下)" 民博通信. 83. 44-67 (1999)
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[Publications] YOSHIDA,Kenji: "Exhibiting“Images of Other Cultures": An Exhibition as Anthropological Fieldwork on Your Ours Culture" Senri Ethnological Studies. (印刷中).
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[Publications] YOSHIDA,Kenji: "The Tokyo National Museum and the National Museum of Ethnology: Museum Collections in modern Japan" Senri Ethnological Studies. (印刷中).
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[Publications] 端 信行: "博物館ブーム" 民博通信. 81. 2-3 (1998)
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[Publications] 端 信行: "西部アフリカ" 福井英一郎編『世界地理10/アフリカII』. 144-253 (1998)
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[Publications] 竹沢 尚一郎: "物語世界と自然環境" 『大地と神々の共生』(講座人間と環境)昭和堂. 第2巻. (印刷中)
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[Publications] 竹沢 尚一郎: "水との共生(安渓遊地との共著)" 川田順造編『アフリカ論』親書館. (印刷中)
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[Publications] KURITA,Kazuaki: "Igoma dance of the Nyakyusa in Tanzania and the Nkonde in Malawi: From Viewpoint of movement of people" Occasional Paper.Center for Asian Area Studies,Rikkyo University. No.7. 7-45 (1998)
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[Publications] KURITA,Kazuaki: "Japanese outlook on Africa: How Information is Transmitted by Media?" Occasional Paper.Center for Asian Area Studies,Rikkyo University. No.8. 75 (1998)
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[Publications] 池谷和信: "変貌する南アフリカ-スクォッター集落からみた都市誌の試み-" 熊谷圭知編『第三世界の地域像の再構築と地誌記述の革新』お茶の水女子大学文教育学部. (1999)
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[Publications] 三島 禎子: "セネガル今日このごろ" 民博通信. 84(印刷中). (1999)
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[Publications] 三島 禎子: "サヘルの宇宙人" 月刊みんばく. 260号(印刷中). (1999)
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[Publications] 三島 禎子: "家族の集まる場/ソニンケ/サヘルの出稼ぎ労働者/セネガル" 佐藤浩司編『住まいにつどう』. (印刷中). (1999)
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[Publications] KAMEI,Tetsuya: "Ingoma: Ndevele Boy's Initiation" Occasional Paper.Center for Asian Area Studies,Rikkyo University. No.7. 46-59 (1998)
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[Publications] 板坂 真李: "村の“保育所"" こどものとも. 7月号. 2-3 (1998)
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[Publications] 板坂 真李: "村の“芸術家"" こどものとも. 8月号. 2-3 (1998)
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[Publications] 板坂 真李: "瘢痕分身から化粧へ-ブルキナファソ西部の身体装飾にみるアイデンティティの受容と操作-" アフリカレポート. 27. 41-44 (1998)
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[Publications] 板坂 真李: "ワニのくる村の穀物倉-西アフリカ・ブルキナファソの穀物倉-" リトルワールド. 68. 5-10 (1999)
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[Publications] 板坂 真李: "おしゃれはなにを伝えるか-アフリカ女性の身体コミュニケーション-" 月刊言語. 4月号(印刷中). (1999)
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[Publications] 吉田 憲司: "文化の「発見」" 岩波書店(印刷中),
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[Publications] 吉田 憲司・村上・隆・神庭信幸・小林忠雄(共著): "色彩から歴史を読む" ダイヤモンド社, 336 (1999)
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[Publications] YOSHIDA,Kenji: "Children<s Masquerades in Africa(in press)" Nelson-Atkins Museum of Art, 256
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[Publications] 石毛直道(監修)・和田正平・石森秀三(編集): "国立民族学博物館 開館20周年記念行事報告みんぱく 1977-1997" 国立民族学博物館, 38 (1998)
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[Publications] 江口 一久: "北部カメルーン・フルベ族の民間説話集V" 京都松香堂, 1200 (1999)