1999 Fiscal Year Annual Research Report
時間の不反転性-超冷中性子による中性子電気双極能率の測定
Project/Area Number |
10101001
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Research Institution | Kure University |
Principal Investigator |
吉城 肇 呉大学, 社会情報学部, 教授 (40044771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戎 健男 神戸大学, 理学部, 助手 (50090543)
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Keywords | 超冷中性子 / 電気双極子能率 / 超流動ヘリウム / スーパーサーマル法 / 超伝導微粒子 / 超対象性理論 / バリオン数非保存 / 時間反転 |
Research Abstract |
この研究は中性子の電気双極能率(nedm)の測定精度の向上を目的としている。CPの破れは現基礎物理学の基礎課題である。nedmはそれに密接に結びついている。またCP問題は時間反転の破れを意味しているがこの直接的証拠がnedmに求められる。最近の超対称性理論によれば、いままで説明できなかった宇宙のバリオン数過剰が説明できるだけでなく、nedmの大きさも此の研究でめざしている大きさに近い。1992に行ったこの研究の概要はhttp://newton.ex.ac.uk/aip/glimpse.txt/physnews.68.1.htmlに引用されている。これによってnedm値改善には液体ヘリウムによる超冷中性子源を使用するという基本方針が確立しこの基本的手法をいかに実現するかという、新しい測定装置の開発が研究の焦点となった。平成10年度の本報告書のあとをうけて、新型の超低温edm測定装置Mark3000の開発研究は平成11年度に成果を収めた。承前のMark3001とよばれるこの機器はCoolingTowerI,CoolingTowerII,RamseyBlockの3部に大別される。CoolingTowerIはその周辺に設置されたポンプ群とともに装置の中心であるedm測定部分(RamseyBlock内に設置されたRamseyChamber)の中の液体ヘリウムを0.5Kに保つ冷凍機を有する。この冷凍機が目的通りの性能を発揮するかの確認が11年度の目玉事業の1つでもあった。目玉事業の他の一つはRamseyBlock内にedm測定に必要な弱い均一な安定磁場をつくることが可能かどうかの確認であった。後者は11年の6月から冷却を開始し7月25日頃設置された超伝導ソレノイドが永久電流モードに入り、実験によって要請されている磁場10magaussを超安定度で発生していることを確認した。しかし種々の事情で3m以上にはつくれなかった現在のRamseyBlockの長さでは未だ外的な磁場の擾乱には改善すべき所もあることが分かった(endcapの設置)。これより以前Cryogenic edmと名ずけられたこの新しい測定法は注目を受け、とくに従来までのedm測定にかかわってきたSussexグループ(UK)との協力関係がすすめられてきた。7月のこの結果からグループはILLにCryogenic edmを目指した実験のプロポーザルを8月30日に提出、その意義が10月半ば組織委員会で正式に認められ、実験へのgosingがでた。一方9月20日に文部省委員会の実地調査を受け全体の運営について種々の改善処置が命じられた。12月半ばよりCoolingTowerIの試運転が年を越えておこなわれ(その間メインポンプがこわれるなど、実験の帰趨を決する決定的危機があったが、関係者の適切な処置によって事なきをえた)、平成12年2月4日UCN発生装置内の液体ヘリウム温度は0.48Kを記録した。しかし同時に種々の改善すべき点も見い出された。3月15日この結果を受けて11年8月のプロポーザルを確認する書類がILIに提出された。実験機器の移動は今夏行われる。一方研究分担者の戎は超伝導微粒子による中性子の検出を行ってきたが、本年度中性子源を更新して測定を行うことにより、何の疑う余地もない確定的な検出をすることが出来た。これによって中性子はもとよりダークマターなどの中性粒子の検出方法の道が大きく開けたことになり今後かかる期待がおおきい。この結果は近日中に公表される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 戎 健男,渡辺 正: "準安定超伝導粒子による超冷中性子の検出"ICRR報告. 120-2. 65-77 (1999)
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[Publications] 黄 斐増,吉城 肇: "スーパーサーマル超冷中性子発生器"ICRR報告. 120-2. 34-43 (1999)
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[Publications] 戎 健男: "Cryo-EDM実験におけるSQUID磁束計"KEK-Proceedings,99-4 H/M. 4. 67-88 (1999)
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[Publications] 戎 健男,渡辺 正: "準安定超伝導粒子による低温環境下の中性子の検出"応用物理学会・放射線分科会誌「放射線」低温放射線検出器特集号. (印刷中). (2000)