1998 Fiscal Year Annual Research Report
低温高圧を用いた新炭素物質合成の第一原理計算機シミュレーション
Project/Area Number |
10137210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常行 真司 東京大学, 物性研究所, 助教授 (90197749)
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Keywords | グラファイト層間化合物 / 高圧合成 / 第一原理分子動力学法 / ダイヤモンド / 電子状態 |
Research Abstract |
グラファイト層間化合物(GIC)を低温で圧縮することにより、相分離を起こすことなくsp2からsp3への結合変化を起こして新構造にいたる可能性について、第一原理分子動力学法シミュレーションを用いて検討を行っている。昨年度末からLiの擬ポテンシャルの改訂作業をすすめてきたが、今年度その精度の検証を終え、第1ステージのLi-GICとその高圧相のシミュレーションを行った。またヘテロダイヤモンドBC2Nの物質設計に関する研究とりまとめを行い、レビュー(日本語)を執筆した。 計算で求めた常圧下のLi-GICの構造は、セルパラメータにして0.3%程度の誤差で実験結果と一致する。同じ精度で高圧下の計算を行い、さらに高圧相として予想されるLi内包ダイヤモンドの構造最適化とエンタルピー計算を行ったところ、約40Gpa以上でLi@diamondがLi-GICよりも安定になることがわかった。あらたに得られたLi内包ダイヤモンドに関する知見は以下の通りである。 構造:高圧下の構造は、Liがダイヤモンドケージにはいることでダイヤモンド骨格の一部の結合がきれ、ダイヤモンドの薄膜とLi層からなる層状構造のようにみえる。 電子状態:バンド計算の結果は複数のフェルミ面をもった金属であるが、結晶構造の低次元性を反映して、3次元的なフェルミ面に加えて2次元的なフェルミ面がみうけられる。Liはほぼ完全にイオン化しており、伝導帯の電子はLiのいないダイヤモンドケージに多く分布する。また格子歪がおおきいため、理想的なダイヤモンドのバンドに余分な電子が加わったというリジッドバンド描像はなりたたないようである。
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