1998 Fiscal Year Annual Research Report
レンズ上皮細胞の増殖抑制因子やアポトーシス誘導因子の人工レンズへの提示
Project/Area Number |
10145251
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
丸野内 棣 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (90181825)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 和宏 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 研究員
高坂 昌志 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (10278294)
|
Keywords | 水晶体上皮細胞 / 眼内レンズ / 後発白内障 / クリスタリン / コラーゲン |
Research Abstract |
本年度は水晶体上皮細胞(LEC)の増殖抑制シグナルを与える分子を単離し、その活性領域を人工基質(眼内レンズ)の表面にディスプレイすることによって、手術後に残ったLECの増殖を抑制するという生物機能を付与した眼内レンズの開発を目的とした。ウシのレンズを用いたLECの培養予備実験によって水晶体カプセルの抽出物がLECの増殖を抑制し、分化を誘導する因子を含んでいることを示唆する結果を得た。また、再現性の良いアッセイ系の確立のためにLECの培養下における性質の変化を詳しく調べた。主な成果は次のごとくである。 a) ウシのLECの培養条件の設定:増殖抑制因子の活性検定にはLEC調製後7日以内に継代した2代目の培養を用いることにした。 b) 継代による細胞の性質の変化:クリスタリン蛋白質の発現がLECの数カ月間の長期培よって減少することは以前から知られていたが、今回の我々の実験条件下では2週間の培養でクリスタリンのmRNA消失し、LECの細胞外マトリクス(ECM)として特徴的なコラーゲンIV型とラミニンのmRNAが同様に減少した。反対にコラーゲンI型とファイブロオネクチン(FN)のmRNAは培養と共に発現が増大した。これらの結果は脱分化の現象を示すもので後発白内障の原因と考えられている術後に異常増殖するLECの性質と共通するものと推定される。なおLECの基本的性質の一つである、転写因子pax6の発現は実験期間中変動しなかった。 c) カプセル抽出物の活性:レンズを取り巻く各組織(前方から順に、眼房水、カプセル、レンズ繊維、及び晶子体)の抽出物のLECの増殖に対する影響をしらべた。顕著な効果を示したのはカプセルの抽出物(CE)のみで、CEはLECの増殖抑制と同時に形態変化を誘導する活性を示した。 d) CEの遺伝子発現に対する影響 2週間の培養下における遺伝子発現の変動に対してCEを20%加えた条件で測定するとLECに特徴的な遺伝子の発現は調べた範囲以内ではすべて増加もしくは安定に維持され、反対に対照では増加していたコラーゲンI型やFNのmRNAは抑制された。
|